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自閉症・発達障害児・者施設 千葉県袖ケ浦市 のびろ学園 視察

今日は千葉県袖ケ浦市にある社会福祉法人 嬉泉「のびろ学園」に視察をしてきました。

社会福祉法人 嬉泉は、昭和41年の設立以来、発達障害児・者、特に自閉症の人たちへの支援の取り組みを長年取り組んできた施設です。

47年にもわたる援助活動は、利用者のケアに心理的な理解を基本として位置付けた実践を積み重ねています。今日では、援助対象者は幅広く、乳幼児期から成人、そして高齢者に至る自閉症を始めとする障害種別を問わない発達障害児・者に及んでいます。

ここの施設の基本理念は、全事業に一貫して東京都発達障害者支援センター長でもある常務理事の石井哲夫氏による受容的交流理論(Acceptable Relationship Theory)※に基づく実践理論を展開しています。どのような障害が有ろうとも利用者の人格と自発性を尊重し、人間同士の関わりを通した主体性の開発と発揮を目的としているものです。

 

※受容的交流理論(Acceptable Relationship Theory)

「受容」とは、利用者の態度や行動をすべて容認することではない。利用者が表している態度や行動の表面的な形にとらわれず、その内にある精神的な働きを分かろうとする姿勢。そのように捉えることで、スタッフが、利用者に親しみや慈しみを感じるようになり、その中で、関わり合いを深め、その発達や生活の援助をすることで利用者は周囲の人に心を開き、その関係と交流の中で、生き生きと生活できるようになるという理論。

 

今日、視察に伺った「袖ケ浦のびろ学園」では、小学1年生から高校生までの自閉症児の子ども達が寮生活をしていました。

ここでは、家庭や学校、地域においてうまく適応できない問題を抱えた自閉症児に対して、「受容的交流理論」に基づいた療育を行い、行動の改善と問題の解決を図り、学校への適応を進め、家庭で暮らせることを目標とし、将来の生活に備え、学園、学校、家庭の調整援助を行い、家庭のある地域で再び生き生きと生活できる、子供らしい力が回復することを目標としています。

子ども達の中には、虐待・ネグレクトで児童相談所による施設入所措置決定を受けた子どもも含まれており、本来ならばこの施設の寮に入らなくてもよい程度の子ども達も在籍しています。(現在、小学1年生から高校生までの39名が在籍中)

また、知的障がい、発達障害などの成人期の方々は、30代・40代半ばから50代の方々が現在、56名入所されています。皆さん、幼少期からこの施設に入所されているとのお話でしたので、その中で恋愛をされ、結婚をされた方がいるのかお聞きしたところ、そのような方々は皆無ですとの話でした。実際に、現場に足を運んでいると、知的障害と発達障害の重度の方々で、恋愛感情をお互いに持つことが不可能な状態であり、自宅で親が面倒を見るのも厳しい方々が入所されていました。

施設の大広間には、皆さんの幼い頃の写真が飾られていました。入所している皆さんが、親御さんたちにどれほど愛され、育てられてきたかを感じることができる、愛情あふれる写真がそこには飾られていました。

スタッフの方々の話では、このような写真を飾ることで、利用者皆が愛情あふれる環境にいたことを常に念頭に置いて接することができるように、との職員に対する配慮だそうです。

確かに、4時間もの長時間視察をさせて頂きましたが、スタッフの方々は体力勝負でした。いろいろな設備や作業所、施設内、そして具体的な話をお聞きしている最中にも、スタッフの皆さんが男女問わず、全力で身体を張って仕事をしている姿には、本当に頭の下がる思いでした。

そのような中で、成人期の方々の日中活動として、「選択的作業指導」を行っていました。学園では、一人ひとりの個性を尊重して、自己実現と社会的自立を目指しています。

アートの作業や産業廃棄物をリサイクル部材として仕分けをする作業場や製菓、製パン、ふりかけ製造、販売活動と言った複数の作業種目から、自分の働く場を選ぶことができます(エコファクトリー)。このような作業所を通じて、自分自身に自信を持ち、人間としての自尊心が生まれてくる支援を行っているそうです。このエコファクトリーでは、社会参加が直接の目標になる方から、障害が重くてなかなか活動が見いだせない方まで全員が参加できることを目指して作業にあたっていらっしゃいました。

仕事場の環境づくりとしては、利用者が心地よく感じられるよう、次のような配慮がなされています。

・自分の世界が守られる居場所

重度自閉症者は、周りの刺激を受けやすい人が多い為、刺激を制限するために、個々に仕切りをつけ、外の刺激が入りにくいようにしている。

・「心の逃げ場」の確保

仕事に気持ちが向けられるようになるまでの心の準備の場所として、また作業中に辛くなった時の「心の逃げ場」として、休憩所を確保している。

・こだわりの仕事ができる環境

同じ仕事でも個々のこだわりがあり、部材の置き方や解体したものを入れる分別バット、使用する道具などの配慮など個々のやり方があるのでそれを尊重している。

アートの部屋で作業をしている方の中には、その才能が開花し、展示会などに出展をされ、その収益を持って海外旅行に出かけられるまでに至った方もいました。現に、歌手の藤井ふみやさんとのコラボで絵を販売したこともある実力です。

この施設に入所されている方々の中には、家庭や地域社会では対応が困難な、自傷、他害、破壊行動、パニックなどの障害を伴う方々もいらっしゃいますが、受容的理論により専門的な対応と、利用者の状態改善の努力が続けられています。

国では、平成5年4月1日付けで「強度行動障害特別処遇事業の実施について」(児発第310号厚生省児童家庭局長通知)を通知、施行し、その中で強度行動障害児・者について、知的障害児・者であって、多動、自傷、異食等、生活環境への著しい不適応行動を頻回に示すため、適切な指導・訓練を行わなければ日常生活を営む上で著しい困難があると認められる者を事業対象として位置づけ、強度行動障害児・者への支援の事業化を行ったそうです。

この時、一時的にこの学園でも、強度行動障害児・者を受け入れたそうです。

ある部屋では、壁が砕かれ、窓ガラスが割られ、当時のままの状態が残されていました。

私はこの実際の凄まじい状況と専門スタッフの話しを見聞きした時に現場で感じたことは、知的を伴わない強度行動障害者と知的を伴う強度行動障害者との間に何の違いがあるのだろうかと感じました。

知的を伴わない状態のいわゆる通常学級で過ごしてきた人たちの中にも、同じような傾向が顕著に出ている状況を垣間見たことがあります。まさに、多動、自傷、他害、異食、睡眠障害等、生活環境への著しい不適応行動を頻繁に示す部分が全く同じです。

幼少期に見過ごされ通常学級で過ごしてきた、学歴も高いような、知的障害を伴わない、見た目には普通に見える大人でも、発達障害傾向が日常生活に顕著に表れ、意思疎通がうまくいかない場合には、人の意見を聴かない強いこだわりから始まり(理屈っぽく、机上の空論)、本人なりの突然の不穏、興奮(パニック)、自傷(自殺念慮)・他害行為、そこからくる攻撃行動、突発的な暴力、家を飛び出す行為を何回も頻繁に繰り返します。

こだわりや固執は家族として生活を進めれば進めるだけ助長し、自傷(自殺念慮)、他害、攻撃行動は益々エスカレートしていきます。本人の激しい不安や興奮、混乱の中で、攻撃、自傷(自殺念慮)、多動、固執、過眠、強迫などの行動上の問題が強く日常生活に現れることにより、家族、家庭生活の維持が著しく困難になるのです。

私が今日この学園へ伺った目的は、知的を伴う重度の自閉症・発達障害をもつ方々の対処法を実践で学ぶことにより、そこから少しでも、知的を伴わない重度の発達障害・自閉症スペクトラムの支援方法の道が見いだせるのではないかと感じたからです。

ここで得た気付きをしっかりと持ち帰り、自分の新たな政策立案の糧にしていきたいと思っています。

今日は4時間もの長時間にわたり、様々な角度で発達障がい・自閉症スペクトラムの研究を深めることができました。

本日は本当に長時間にわたり、貴重な体験をさせて頂きました。

ご丁寧にご説明をくださいました、職員の皆様方、本当にありがとうございました。

感謝申し上げます。