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足立区議会民主党会派視察① 京都府「生活・就労一体型支援の取組み」について

7月29日から31日まで、民主党区議団で、京都府・大阪府に視察に行ってきました。

今回の視察は私のライフワークである生活支援戦略事業と発達障害施策を考えていく糧となる視察でもあります。正直、大変有意義な視察でもありました。
それでは、今日から数回にわたって、視察のご報告を致します。

まず、第1日目、京都府の京都式生活・就労支援の取組みについて視察を行いました。

国が今年度から始めた「生活支援戦略」では、経済的に困窮している人や社会的に孤立している人に対して早期発見を行い、個々に合わせた自立生活のためのプランを作成することが盛り込まれています。

如何にそのような人たちを発見し、家族をも含めた支援策として受け皿を作っていくのか。まさに各自治体間で今後、試行錯誤を重ねながら、支援策を練っていく課題でもあります。

生活困窮者が23区で一番多い足立区として、国が提示している「生活支援戦略」事業を活用し、早期の自立、生活困窮から脱却した支援策を全力で構築しかなくてはいけない課題の一つです。

全国の生活保護受給者数は平成25年3月末現在で216万1053人(厚労省発表)。過去最高だった昭和26年度の204万6646人(月平均)を平成23年7月に上回り、以後毎月更新されています。世帯数も157万8628世帯と過去最多です。

今回、視察に伺った京都府の生活保護受給者は、平成25年3月末現在で6万2829人、世帯数は4万2884世帯(世帯数は過去最多)でした。ちなみに京都府は昭和29年度の7万2923人(月平均)が過去最多となるそうです。 

平成22年度から京都府では、京都生活・就労一体型政策研究会が設置され、生活保護受給者等の生活保障と就労とをつなぐ一体的な支援等の実現に向けた取り組みが行われています。この研究会のメンバーには、行政、生活就労支援に関わる学識経験者、支援団体、経済団体、労働団体などが含まれています。 

京都府が目指す3つの目標として、以下を掲げています。

・稼働年齢層を中心に3年間で5000人(ボーダー層の人も含めて)の自立を支援

・自立支援のサポート体制の構築

・オール京都体制で子供の貧困問題に取り組む

このようにして平成23年度から取り組みが始まった京都式・就労一体型支援事業は、稼働年齢層にある生活保護受給者と長期離職者などを支援対象として、以下の支援メニューが揃っています。

・京都自立就労サポートセンターの運営(国のモデル事業として実施)

・日常生活等自立支援事業

社会的居場所と就労体験への支援等のサポート推進事業

就労体験事業(府内4か所)

・中間的就労への支援事業

ジョブトライ事業(実習受け入れ企業24社)

中間的就労の場を提供する企業への支援(2社)

・子どもの居場所づくり事業(府内2か所)

この支援メニューを平成25年度にも積極的に、展開をしていくそうです。

また、内閣府のモデル事業ともなった京都自立就労サポートセンターが設置されています。

京都自立就労サポートセンターでは、パーソナル・サポートサービスを展開しています。最大の特徴は、寄り添い型・伴走型支援と呼ばれる点で、相談者に対してパーソナル・サポーター※が制度の垣根を越えて一対一で生活や就労の相談に乗り、必要な制度やサービスに繋ぎその後も継続して支援を行うという取り組みを行っています。

※パーソナル・サポーターとは…

利用者の就労や生活に必要なサービスをコーディネート(調整)していく専門職

この自立支援サポートセンターの利用者においては、就労意欲はあるものの一足とびに一般・中間的就労にステップアップできないケースが多々見受けられるそうです。そのような対象者が、センター利用者の約1/3いるそうです(40名程度)。

その方々のために、京都府の施設内に置いて就労体験ができる「ふれあいカフェ事業」が行われています。皿洗いや支援対象者同士の交流が出来る様コミュニケーション能力の向上にも役立っているそうです。また、リラックスができる場としてのカウンセリング機能も備わっています。

また、中間的就労して、就労意欲の乏しい生活保護受給者に対してのきめの細かい段階的な取組も行われています。

例えば、企業などから業務を請け負い、就労に不安を抱える生活保護受給者などでも取組み可能な仕事に分解し、再構築して雇用を創出するそうです。また、買い物弱者のために公共交通機関の利便性が悪い地域において、小さなマルシェ(市場)を開催するなど、地域ニーズに基づいた事業を展開することにより生活保護受給者の雇用を創出しています。

また、さらに京都府では、各年齢層に合わせた新たな就業サービス拠点としての京都ジョブカフェが開設されています。これが最大の目玉でもある、「全国初の国と地方の完全一体型就労支援」の取組みです。

京都府が国に対して「アクションプランを実現するための提案」を行い、国が了承したものです。

京都府の提案内容は以下のものだったそうです。

・ハローワークコーナーの機能強化

(雇用保険、訓練受講指示、各種助成金事務の実施など)

・京都府の無料職業紹介権の再取得

 

この提案を国に対して行った結果、

・京都ジョブパーク内でほぼ全てのハローワーク機能が利用可能となり

・ハローワークの受講指示などの権限や京都府が実施する職業訓練事業などを生かし、新たにジョブパーク塾を開始することができた

・ハローワークによる職業紹介に加え、京都府の無料職業紹介事業の実施により、さらにきめ細かなマッチングを実施

・職業紹介を通じ、喫緊の問題でもある大学生などと中小企業とのマッチングを強化

することができたそうです。

京都府では、この事業の取り組みの中で、課題が少しずつ見えてきたそうです。

例えば、半数以上の人たちは、半年過ぎても就職内定を得るには至らず、内定獲得時期の二極化が進行しているそうです。

また、今年度から再取得した京都府無料職業紹介権に基づき、ジョブパークの求人の受理、職業紹介を実施しても求人充足率が伸び悩んでいるそうです。

これを受けて、平成25年度から京都府では以下の内容を対応策として新たに構築されました。

・京都府ジョブパークカレッジ(人づくり大学)の創設

企業は基礎学力や専門知識に加え、求職者がこれまでに重視してこなかった「社会人基礎力」を持つ人材を求めているのに対し、両者の意識のずれがミスマッチの原因となっているそうです。

京都ジョブパークでは、これまできめ細やかなカウンセリングや就活力を身に付けるセミナーやテクニカルスキルを習得する公共職業訓練を活用して就職支援を行ってきたそうですが、逆に社会人基礎力が不足している人は結局就職が決まらず、就職活動が長期化する傾向にあるそうです。

その為、一人ひとりの状況に応じた社会人基礎力を取得する新たな研修・公共職業訓練を実施すると共に、ジョブパークの就職支援機能を最大限に活用することによって就職困難者の早期就業を支援することを目的にこの大学が設立されました。

 

就労を前提とした支援を行うことは簡単ですが、元々の困り感がどこからきているのかを見極めることが重要です。支援の入り口から出口まで、その出口にたどり着くまでの厚い支援整備を構築していかなくてはいけません。個々の問題の中には、知的を伴わない、幼少期に見過ごされた成人期発達障害者などの精神疾患を抱えた人たちもいます。また、当事者のみならず、当事者を抱え、困り感を持ったままの家族に対する家族支援も同時に行うべき喫緊の課題でもあります。

この視察を通じて、まさに課題や困難の程度の多様性に応じた施策の充実と制度間の連携がとても重要であると感じました。京都府の事業はまだまだ道半ばの状況ですが、この取り組み事例からさらに拡充させた細かい支援整備に繋がることを願っています。

今後もさらに様々な地域での取り組みをさらに深く研究しながら、足立区の施策につなげていきたいと思っています。

最後になりましたが、京都府の取り組みについて丁寧にご説明いただき、京都府の職員の皆様に、改めてお礼申し上げます。