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発達障害当事者・家族支援の構築に向けて⑥~鳥取県における強度行動障害に関する支援者養成研修 視察

鳥取県倉吉市役所での視察の後に、午後から3時間半、「強度行動障害に関する支援者養成研修~強度行動障害者の行動問題への介入手順とその対応方法~」の研修会に参加をさせて頂きました。講師は鳥取大学院医学系研究科 教授 井上雅彦先生です。

この研修では、知的障害を伴う発達障害の強度行動障害の特性を持った当事者の支援に携わる福祉従事者・学校関係者を対象とした実践的な研修会が6回、倉吉市で行われています。今回、私が参加をさせて頂いた研修は第4回目です。

強度行動障害の判定基準は以下の通りです。

・強度の自傷行為…肉が見えたり、頭部が変形するような叩き方をしたり、爪をはぐなど。

・強度の他害行為…噛みつき、殴り、蹴り、髪ひき、頭突きなど相手がケガをしかねない行動。

・激しいこだわり…強く指示しても服を脱いでしまうとか、外出を拒み通す、何百メートルも離れた場所に戻り取りに行く、等の行為で止めても止めきれないもの。

・激しい器物破損…ガラス・家具・ドア・茶碗・椅子・メガネなどを壊し、その結果危害が本人にも周りにも大きいもの、服を何としてでも破ってしまうなど。

・睡眠障害…昼夜が逆転してしまっている。ベッドについていられず、人や物に危害を与えるなど。

・食事関係に関する強度の障害…テーブルをひっくり返す。食器ごと投げるとか、椅子に座っていられずに皆と一緒に食事ができない。特定の者しか食べずに体に異常をきたした偏食など。

・排泄物にかする強度の障害…便を手でこねたり、投げたり、壁面になすりつけるなど。脅迫的に排尿・排便行動を繰り返す。

・激しい多動…身体・生命の危機に繋がる飛び出しをする。目を離すと一時も座れず走り去る。べランダの上など高く危険な所へ上る。

上記のような噛みつき、頭突き、睡眠の乱れ、同一性の保持などの行動は、大多数の人から見れば問題行動となりますが、その当事者にとっては、適切な支援が受けられなかったり嫌な場面を回避したり、要求がわかってもらえないことによるコミュニケーション行動と言えるものです。このような自傷他害行為に伴う行動の後のどのような事態がその行動を強化しているのかを具体的に調べることが重要であるそうです。

当事者が行っている奇異な行動一つひとつにが本人なりの理屈が合ってやっているそうです。我々は、普通の物差しでその状況を測るのではなく、その障害特性に合わせた物差しで測っていかなくてはいけないという困難さ、普通という尺度では測れない境界線を垣間見た状況です。 

この強度行動障害は不適切な関係や障害特性への配慮不足による2次障害でもあるそうです。その為、治療するというものでもないようです。適切な配慮と支援によって改善されたとしても配慮不足や不適切な支援によりまた再現すると言われています。この発達障害者の2次障害や強度行動障害への予防と対応は、この支援に携わる方々が一方的な価値観でとらわれずに、障害特性をしっかりと見極め、専門的な知識と配慮で個別具体的な案件を皆で共有して議論し、このような研修の場を通じて、改善策を皆で練っていくという作業の積み重ねが実践の現場で生かされているものであると改めて実感した次第です。

知的障害を伴う発達障害の強度行動障害と知的障害を伴わない、暴力行為が出る発達障害の人との重なりあいはどのように違うのか、私にしてみると当事者に対する接し方は両者ともに共通点があるのではないかと思います。

この研修では、ストラテジー・シートやその実行度チェックシートを使用していました(写真参照)。この用紙を活用してグループ内でのアイデアの出し合いや課題の解決方法を議論し、発表しました。

私はこの強度行動障害の研修の中で、知的障害を伴わない成人期の発達障害当時者・家族支援につながるヒントがあると思いました。
幼少期に見過ごされ、頑なに自分を変えようとしない当事者を抱えている家族は大変疲弊している現状です。自殺すると騒いでいる当事者よりも、その周りの家族が本当に自殺念慮を抱くほどです。

そのような当事者や家族に対して、先ず行うことは、家族支援から入ることが有効であると私は思います。その次に、どのように当事者と向き合うかではないでしょうか。

今の現状では、各都道府県に設けられた発達障害者支援センターの相談窓口に相談するだけでは全く解決になりません。知的障害を伴わない幼少期に見過ごされ、成人期まで達してしまった当事者に対する支援策を考えてみました。以下の通りです。

※ここでの支援策は、2次障害(抑うつ・人格障害などを併発)を持った、程度としては高い発達障害者を抱えている家族・当事者に対する支援策を仮定しています。

 

・疲弊している家族と一緒に考えることができる寄り添い型の支援者(発達障害コーディネーター)が専門につくことはできないか。(パーソナルサポート制度の活用ができないか?)

・ストラテジー・シートを用いながらの解決方法を家族と支援者とで共有する。

・ストラテジー・シートの実行度チェックを家族にさせる。

・この実行・成功体験を家族に少しずつ与えていく作業を行うことで家族の精神的な安定感を与える。

 

当事者を抱える家族の心に希望の光を与えることが一番重要だと私は考えます。

その次に行うことは、当事者本人に気づきを与えるアウトリーチ型支援ではないでしょうか。そのアウトリーチの仕方も、専門家がすぐに入るのではなく、当事者が心許せる人に研修を受けてもらい、サポーターとして家庭の中に入ってもらうことが重要だと思います。なぜなら、家族が本人に発達障害を受容させようとしても全く受け入れない状況があるからです。

・当事者が心許せる職場の上司や友人や近所仲間などに研修を行ってもらい、家庭の中に入ってもらうことは出来ないのか。また徐々に家庭に、当事者が気を許せる第3者を入れ、当事者に対する気づきと支援に乗るような促しを与えることは出来ないか。

・促しに成功した次には、本人を臨床発達心理士につなげ、社会性を身に付けさせるプログラムに乗せる。

という段階ごとの支援策を考えてみました。

今回のこの強度行動障害の研修は、たくさんの気づきと新たな発見を頂くことができました。

この2日間、鳥取大学院医学系研究科 教授 井上雅彦先生が全て視察をコーディネートして下さり、大変感謝しております。

今後とも、井上先生のお力を頂きながら、私は足立区から発達障害当事者・家族支援の構築に向けて全力を期して行きたいと思います。

今後とも、ご指導のほど、切によろしくお願い申し上げます。