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発達障害当事者・家族支援の構築に向けて⑨~大分県発達障害者支援センターECOL 視察

2日目、大分県発達障害者支援センターECOLの視察です。

大分県発達障がい者支援センターECOLには、発達障害者支援専門員養成研修を構築された五十嵐猛センター長がいらっしゃいます。大分県の視察の最大の目的は、五十嵐猛所長と会い政策立案の糧を頂くことです。全国的にも社会的な整備が全く皆無と言っていいほどの状況にある、幼少期に見過ごされ発達障害を受容しない人たちのための成人期の発達障害当事者・家族支援施策をどのように構築していくべきか、ヒントをもらいに大分県までやってきました。

このセンターに寄せられる相談や困難事例は個別的で多肢に渡り、深刻な例も少なくないそうです。その原因は、発達障害の特性に対する周囲の無理解がもとで本人や家族が孤立化しています。個々のライフステージを通して適切な支援を見通して実践・検証を行うことができる実践家の確保と、当事者やその家族、支援者が孤立していかないように専門機関が連携することが望まれます。五十嵐所長はこれらの課題を、大分県発達障がい者支援センターECOLの最重要課題として位置付けています。

平成17年に施行された「発達障害者支援法」の中では、発達障害に関する専門性を各地域や各療育の中で育てていく仕組みづくりと専門機関の連携体制を整えることを国及び地方公共団体の責務として謳っており、その研修運営や情報提供・連絡調整を果たしていくことが発達障がい者支援センターの役割として明示されています。大分県では、平成3年から自閉症の専門的な相談や療育支援に携わり、平成14年から大分県からの委託で自閉症に関する専門的な相談や研修会を行ってきた社会福祉法人萌葱の郷めぶき園が発達障害者支援センターの委託を受けて平成17年より運営しています。

五十嵐所長は、平成18年から大分県発達障がい者支援専門員養成研修に取り組んでいます。この養成研修は定員30名に対して毎年100名を超える応募者があり、関心の高い研修になっています。これまでに3か年の研修を修了した105名が支援専門員として認定を受け、スーパーバイザーとして毎年200名(延数)が県内関係機関に派遣されているそうです。

また、平成21年度には、大分県の事業として「発達障がい者支援専門員派遣事業」が発足し、毎年200名か所程度に専門員を派遣しており、平成22年には専門員の資質の向上と連携を目的とする「発達障がい者支援専門員の会」も発足されました。

派遣事業の実績は平成21年度に96件、平成22年度は192件とニーズが倍増しているそうです。急速に発達障害支援ニーズが高まっていることを示唆しています。大分県や各市町村がバックアップしていることから、厚生労働省の社会・援護局障害保健福祉部における発達障害支援対策勉強会にも説明をしているそうです。

このように五十嵐所長が考え設立した、「大分県発達障がい者支援専門員養成研修」は、当事者、医療、教育、福祉、行政が結集して自閉症専門施設での実務研修や当事者会への参加、関係諸機関の視察や事例研究などが結集され織り込まれたものです。

この制度はまさに発達障がいの理解と支援と連携を進める上においては画期的で大変意義のある事業だと思います。

五十嵐所長の話しによると、自閉症を始めとする発達障害者への2次障害や強度行動障害への予防と対応は、発達障害の支援に携わる者が発達障害の特性について専門的な理解と知識を深めると共に、発達障害者支援に関する理念や援助技術の在り方についてライフステージを通した実践から研鑽することが求められるそうです。支援者側が一方的な価値観にとらわれずに障害特性に配慮し、専門的知識と経験に基づいて謙虚に個別的に関わる事とさらに、周囲に正しい理解と支援を広げていくことが当事者の行動障害を予防したり、改善することに繋がるそうです。

五十嵐所長は千葉県のびろ学園で強度行動障害の人たちの対応もされてきた実践的なノウハウをお持ちの方でもあります。知的障害を伴わない幼少期に見過ごされた成人期の発達障害の話しにも的確にお答え頂くことができました。五十嵐所長の今までの経験値から言えばこの領域の方々は、人とモノとの区別がつかない人たちが多いという事を示唆されました。

ディスレクシア・学習障害でもなく注意欠陥多動性障害でもない、空気の読めない人たちがいると言われました。このような方々は、捉え方が通常の人と違い、物事の捉え方、認識が全く違う人たちだと言われました。

このような人たちは日常生活の中で様々な困難に遭遇しており、彼ら特有の感じ方や認識の違いから周囲からは理解されにくい行動を示してしまう場合が多くあるそうです。そのため、当事者たちが安心して地域生活を送る為には、この特有な感じ方や認識の違いを理解した上で、自分の価値観を我々が一方的に押し付けるのではなく、相手を理解しコミュニケーションの仕方を工夫することを心掛けると共に双方が折り合いを付けながら前に進むことができる仲介する通訳者・支援者の存在が求められるそうです。

確かに、そのような認知の違いを受け入れるには、相当な覚悟が相手方に要供されます。一般的に大多数の人たちの思考回路と発達障害特性を強く持ち合わせている人とは全く違います。何度も理解不能に陥り、この人は「普通じゃない・まともではない」と思ってしまうほどです。

例えば、まさに高学歴の人であっても通常の生活の中で、信じられないほどの幼稚さ・稚拙さが顕著に表れます。

どうでもいいことでのこだわり感、家族全員がみな平等という理論です。

小さい子供がいても、そこには親としての配慮やパートナーとしての自覚や責任能力は全く持ち合わせていません。しかし、それを本人に何度となく伝えても、今まで自分が学年トップで通してきた自尊心から、「自分は知識人だから」の一言でそれ以上に話が通らず全く会話が成立しない状況があります。何度となく言えばいうほど、本人を追い詰めることになり、本人の思考回路がストップしてしまい、他罰的言動を繰り返し、家出を繰り返す言動の日々。自宅に戻っても、自室で15~16時間布団から出て来ずに部屋は真っ暗、ピクリともしない状況下、しまいには自殺念慮を口に出される日々です。

何をどのようにしたらいいのか、そのような当事者を抱えた家族はどうしようもない不安と閉塞感の毎日です。そのような当事者がどのような支援メニューに乗せられるのか?いまの社会整備はそのような人たちに対する整備は皆無の状況です。このような家庭生活では離婚しか選択肢はない状況となっています。

支援者としての重要な立ち位置になり得る、通訳者がまさに必要です。そして問題が顕著に出てしまっている家庭に派遣し、家族とのズレを修正していくアドバイザーを構築する必要性があります。それを行うことでどれだけの家族が救えるか。「当事者の認知の違いを解説できる人」そのようなアドバイザーをたくさん作り、各家庭に派遣し、当事者や家族とのズレの調整をしていく役割を担う制度を構築すべきと私は考えます。

「発達障がい者の特性と気質の違いを見極めないといけない」と五十嵐所長に言われました。

受容したくない当事者は「障害」という言葉を嫌う。支援のメニューに乗せるためには、障害という冠を外すことも必要だと言われました。「障害」という言葉を確かに当事者は大変嫌がります。自分は障害を持っていない。絶対に認めないという気持ちが強いため、どんどん嫌悪感を募らせ、支援に乗せることが不可能となります。そのためにも障害の冠を外さなくてはいけないとも言われました。

支援センターからは、気づきのある当事者を入れ、気付きの無い人たちがそこから入ってこられる支援のメニューを揃えていくことも必要であり、それをすることが、当事者を救う一つの手法として枠が広がるともおっしゃていました。

今回、私自身の想いと専門家の意見を併せることで、再度、自分が今まで練り上げてきた政策立案の糧の再確認ができました。

今後も五十嵐所長からさらにご指導を賜りながら、国・自治体間での役割分担の在り方、そして何よりも足立区から何ができるのか、しっかりと見極め、効果的な支援方法を検討しながら政策を立案し、その実現に向けて全力を期して行きたいと更に決意を強くしました。

本日は大変貴重なお時間を五十嵐所長始めスタッフの方々にお取りいただき、大変感謝申し上げます。

本当にありがとうございました。