決算特別委員会の質問⑤ : 事業の目標設定について
引き続き、決算特別委員会の質問のご紹介です。
今回は、事業の目標設定について質問をした部分です。
事業の無駄をなくす、また本当に必要な事業に資源を投入するためにの判断基準のひとつが、行政評価です。
事業の評価の仕方には、その事業の必要性や費用対効果などの評価ポイントがありますが、「事業の目標達成率」も大きな指標のひとつです。
しかし、行政評価シートをみると、本当に意味のある目標設定をしているか疑問になる事業もあります。
たとえば、放置自転車を減らす事業では、前年度に比べて目標とする駐輪場の収容台数を下げてしまっています。
目標が下がったために、結果的に事業の達成度は上がりますが、駐輪場の収容台数が少なく、官民挙げて取り組んでいる最中の目標設定としては疑問が残ります。
また、起業家育成事業では、育った起業家の数ではなく、講習の受講者数を目標値として評価をしています。
これでは講習を受けてもらうことが目的の事業ということになってしまいます。
しっかりとした事業評価を行うためにも、本当の目的=起業家の育成が目に見えて分かる目標(たとえば、受講者の中からの起業者数など)を定め、その目標に対しての達成率で評価すべきです。
これらの例のように、行政評価の判断基準のひとつである目標設定は、ともすれば評価の印象を変えるほど、重要なものです。
本当に意味のある自己評価、行政評価のためにも、
・本来の事業の目的に沿っており、事業の評価の参考になりうる「目標」か?
・目標達成率を高くするための「目標」を定めていないか?
・毎年、検証を行うことなく同じ「目標」を繰り返していないか?
などの点を意識した、意味のある「目標」と「達成率」を示し、正しく評価できるよう、改善を求めていきたいと思います。
***以下、委員会の質問と答弁(抜粋)です。(読みやすいように、一部修正)***
<長谷川>
次に、事務事業評価の1の68ページに、放置自転車の違法駐車を減らす事業というものが載っておりまして、これに関連してご質問をさせていただきたいと思います。
行政評価のために、年度ごとの目標値というのは設定されていると思いますが、この事業では、公営自転車駐車場収容可能台数を目標値として採用して、21年度の実績にあわせて、22年度の目標値が21年度の3万1,124から2万9,191に下方修正されています。
事業分析では、近年、自転車利用者が増加傾向にあり、特に駐輪場の収容能力不足が低下している地域から、拡張も含めて駐輪場を整備していく必要があると書いてあるにもかかわらず、収容可能台数の目標値を下げるというのは、ややこれは不思議な感じがしました。
その結果、21年度の目標に対する達成度は93%、目標を下方修正した22年度の達成度は100%となっていまして、一見、目標達成率は高くなっていますが、目標を下げて達成率が上がっている可能性もあるので、これでは評価としては意味がないものではないでしょうか。
例えば、その事業の目標設定の中で、苦情の処理件数とか、何かの違反に対しての指導数などの目標を高く設定するのはおかしな話ですので、前年度の実績や平年度の平均にあわせた設定でいいと思います。
しかし、駐輪場の収容可能台数のような目標まで、前年度の実測値にあわせるというのは、達成率は、次の年に確かに上がりますけれども、それは目標値が下がったことも影響するというものになってしまいます。
私は、このような事業の場合は、前年度の実績数をベースにして次年度の目標値を設定するというやり方は、おかしいのではないかと思いますが、区長は、このような目標設定というのは妥当なものだと思われますでしょうか。
【区長】
申しわけありませんけれども、その件につきましては、私ちょっと存じ上げませんので、ただ単に無責任に感想だけ申し上げるわけにいきませんので、その点につきましては、ご回答、ご容赦いただきたいと思います。
【交通対策課長】
済みません、この実測値ですが、21年から22年、減っている理由としましては、綾瀬地区、これあくまでも区営の駐輪場の収容台数です。
これにつきましては、約2,000台、綾瀬西と袋橋、これが整備センターの方に移ったことによって駐車台数が減っていると。
それで、22年から23年、減るにつきましては、竹の塚六丁目無料駐輪場、これが減ることによって数が減っているということでございます。
<長谷川>
足立区全体で見たときに、一時利用の駐輪場が地域によって大幅に足りないところというのが、いま現在の状況です。
そういう状況も踏まえた形での目標設定としたならば、この目標値は、下がるのではなくて、そのまま維持するか、もしくは上がっていくものではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
【交通対策課長】
これは、あくまでも区営の収容台数です。
我々の方としましては、あわせまして、民営補助の方でも、あわせまして全体の駐輪台数を目指しています。
これにつきましては、やはり区営ですから、駅、駅ごとによって、土地の状況等の中で取得可能であれば、当然、それは次年度に目標値として上げることはできますが、やはりそこら辺の見通しがない中では、公営公共については、数字が伸びづらいという部分があります。
【都市建設部長】
この駐輪場の管理運営事業につきましては、事業の評価ということで、よく言われるアウトカムとアウトプットという話があります。
これについては、区営の駐輪場につきましては、いかに計画的に確実に実施をしているかという観点で目標設定いたしましたので、アウトプットという形での目標設定にさせていただいて、いま進めているというところでございます。
<長谷川>
次に、中小企業支援課の内容で、これも同じような内容にもなってくるんですけれども、事務事業調書の評価報告書の2の200ページにある起業家育成事業について、ご質問させていただきたいと思います。
足立区で新たに起業される方を支援する制度ということは、とても有意義だと思いますが、事業の目標が起業家支援塾の受講者数となっていました。
これには違和感がありまして、本来であれば、その受講者の中から起業した人や設立した会社の数を目標値にすべきだと思いますが、そのようにはなっていませんでした。
お話をお聞きしたところ、21年度では、その受講者45名中、起業した方が3名いらっしゃったということですが、毎年、2人、3人、会社も一つか、二つなのか、そこは予想は難しいですが、数としては少ないだろうということは推測されます。
しかし、事業のその目的にかなう目標設定というものにしないと、何を目的とした事業なのか。これを見ると、受講者数をふやすことが目標・目的なのかということにもなりかねません。
毎年、この起業家育成事業で、50件、100件の成果が出るということは、もう全く考えておりません。
数は少なくても構わないので、事業の目的である実際の起業された数を目標に頑張っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
【中小企業支援課長】
こちら、事務事業評価の調書のことですけれども、この起業家育成事業、 これだけで実際に起業に結びつくのは難しいのかなというふうに考えております。
ほかに、創業するなら足立区でというふうに冠をつけてやっておりますので、例えば創業プランコンテストですとか、創業資金の融資あっせん、あるいはスタート・オブ・ビジネス事業、そういったもろもろの事業が重なって、実際には創業に結びつくんだろうというふうに考えております。
ただ、委員のおっしゃる目的は当然のことですので、起業を志す方々が、そういった継続的な情報交換とか交流を深めていくということは重要なことであるというふうに考えておりますので、一番下の課長評価のところに、そういった意味で、自主グループの育成や支援にも力を入れていくというふうに書かせていただいております。
実際に、昨年、そういった自主グループができましたので、そういったところに対しても、会場の提供ですとか、講師謝礼等の助成をやっているところでございます。
<長谷川>
実際に受講された数ではなく、今後は、起業される方の数を、明確に目標設定として掲げていきたいというふうに私は思いますが、その点はいかがですか。
【産業経済部長】
当然、こういう創業支援塾に参加される方が多ければ、委員もおっしゃられたように、そのうち何%かの方が、そういうものに結びつくだろうという、そういうがいせつせいがありますので、この数字を記載して、この数字自体は、私は、必要な指標として十分なものだろうとは思います。
いまおっしゃられたように、結果としての、アウトカムとしての、実際に、そういうふうに起業なされた方、こういうものも指標の欄、まだ第2指標、指標の下の欄があいておりますので、そういうものをつけ加えていくことについては、これから検討していきたいと思います。
<長谷川>
本当に必要な事業の場合は、本当に必要な目指したい数と目標というものを、明確に、しっかりと掲げていただきたいと思います。
それに対しての結果が、どうであったかということを、冷静に分析をしてこそ事業評価の意味があるがあるのではないかと考えます。