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埼玉県庁「発達障がい者支援施策」についての視察

足立区から発達障害者支援策を構築するために、様々な現場に行き、日々研究をしています。

今日は午後から、埼玉県庁で「発達障がい者支援施策」の取り組みついて、福祉政策課の発達障害対策担当部の専門部署からお話を伺ってきました。

埼玉県庁が行っている発達障害者支援施策として、今年度の予算額は1億8153円余。

埼玉県庁では、平成22年度から毎議会ごとに、発達障害についての質問が議員よりあり、上田知事がそれに応えた形でこの施策が現在も進んでいます。

埼玉県では、幼少期の段階に絞った形で、発達障害児の早期発見・早期支援を促進しており、特に人材育成や親への支援、診療・療育体制の強化に力を入れていました。小学校就学前から就学後に継続した支援を実施するため、幼稚園・保育所と小学校の意見交換や事例検討を行う場を設定しています。

全市町村では、障害の知識を有し、支援の中心となる「発達支援マネージャー」として人材の育成を行ってきたそうです。「発達支援マネージャー」とは、早期から発達障害に関する各種相談に対応でき、発達支援施策の企画・立案ができる市町村の職員を指します。発達障害支援に関わる「障害福祉担当」「子育て支援担当」「母子保健担当」者の職員がその対象となります。研修期間は10回ですが、1年を通して行われます。平成23年度は166人、平成24年度は155人と現在まで321人養成をしたそうです。これにより62の市町村5人ずつ行き渡るとのお話でした。

また、全ての保育所・幼稚園・地域子育て支援センターでは、職員を対象とした発達障害の知識と早期発見ができる人材の育成を行っており、さらに、発達支援に対する組織的取り組みを促進するために、幼稚園・保育所のトップに対する研修も実施しています。昨年は939人が研修を済ませており、今年は1000人規模を予定しているそうです。

また、医療・療育の専門職に就く方々を対象として、小児科や看護師に対する研修を行っています。療育を行うセラピスト(作業療法士等)の育成や保健師や障害児通所施設の職員に対する研修も行い、実践的な支援手法を取得させ、地域で療育や親支援ができる人材を育成しています。こちらの参加人数は、昨年度は、400人から500人の参加があったそうです。

発達障害児は環境の変化に適応しづらいため、小学校に入学をすると落ち着かず、障害特性が顕著となり、集団生活になじめなくなる場合があります。そこで、小学校において発達障害の医学的知識や療育支援手法の知識を有し、幼稚園・保育所や関係機関との連携により継続的な支援を行うことのできる人材育成が重要となります。そのため、埼玉県では、幼稚園・保育園から小学校への支援をつなげる特別支援教育研修を行っています。通常学級の中には6.5%の発達障がい傾向のある児童・生徒がいる(文科省からの試算が昨年末に出されています。)という認識を学校全体で共有し、校長などの管理職や、教諭、低学年の担任教諭がそれぞれの立場で学ぶことで学校全体の支援へとつなげていく取り組みを推し進めているところです。

また、今年度の事業としては、子供の発達支援巡回事業を行います。臨床心理士や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門知識を有する者が保育所・幼稚園・地域子育て支援センターを巡回し、保育士などに対して発達障害が疑われる子供の対応について助言や指導を行い、必要に応じて親への育児相談や支援を行い診療や療育につなげていくそうです。

親への支援策として、子供の発達や行動が気になるなど子育てに悩んでいる保護者を対象とした子育て応援事業も進めています。親のストレスを緩和し子どもとの遊び方や子育てを学ぶ機会を提供し、よりよい親子関係を築くことを目的とした事業の展開を図るものです。

平成24年度は仕事などの関係で平日日中での開催は参加が困難な親への参加を可能とするため、仕事帰りの時間帯に県内主要駅から近く利便性が高い公共施設などで講座を開催したそうです。

今年度については、平日夜間開催だけでなく、土曜の開催も検討しできるだけ、対象の保護者の利便性を考えていく予定を検討していくとの話でした。

また、発達障害者支援のための「サポート手帳」を交付しています。これは、主として発達に気がかりな人や発達障害のある人、その家族が使用するものです。そのような傾向にある人たちが乳幼児期から成人期に至るまで、一貫してよりよい支援を受けたり、様々な生活場面で障害の特性を適切に理解してもらうために作られました。

 

このような形で発達障害者支援策を進めているそうですが、この支援事業による効果が、現場で、目に見える形で表れてきています。幼稚園・保育園での変化として挙げられるのが、以下の点でした。

 

発達障がい傾向の児童に対する園の気づき

研修効果・早期発見できるようになったと答えた園の割合

研修前は27.4%→研修後は82.3%

 

園の変化

組織全体で対応するようになった 79.6%

具体的事例

・特性に合わせた声掛けや気になる行動の記録をするようになった

・時計やボードを使って時間の目安を伝えた

・個別に説明をし、一緒に取り組むようにした

 

子どもの変化

子どもの行動に変化があった 67.9%

具体的事例

・特性に合わせた声掛けにより言葉が出るようになった

・スケジュールを理解してみんなと行動ができるようになった

・乱暴な行動が収まり、クラス全体が落ち着いた

(7割近く、パニックが減った)

 

保護者の変化

園側からの保護者への働きかけ 81.7%

保護者がそれにより変化が見られた84.7%

具体的事例

・感謝の言葉や笑顔が見られるようになった

・子どもの状態を受け入れ、専門機関に通うようになった

・保健センターと連絡を取り合うようになった

 

埼玉県では県民に対する啓発活動として、「子どもの発達障害がわかる・乳幼児編」としてのGuide bookを出されていたり、保護者に対する発達障害児への子育て冊子も視覚に訴える分かりやすいもの(親も発達障害傾向の場合も多いため)を作っています。また、青年期・成人期の発達障害を理解し支援を広げるサポートブックも出されています。

発達障害者が働きやすい環境になる為には、職場での共通理解が大切になります。つい先日の5月24日には、発達障害者の理解を深め、就労や職場での支援の在り方について考える「発達障害者支援・雇用促進セミナー」がさいたま市内で開催されたそうです。出席した企業関係者らに対して、様々な事例を紹介し、発達障害者が職場で活躍できる環境づくりを求めたそうです。このセミナーには県内企業や大学・就労支援・福祉・教育機関の関係者ら約130人が出席したそうです。

青年期や成人期に関することはこれからどのように構築していくのか、検討を重ねていくとの話でした。

埼玉県が特化して力を入れているステージは、幼児期から小学生の段階でしたが、この事業が立ちあがってから2年程で、これだけの成果が出るとはすばらしいことだと思います。例えば、この埼玉県の取組みの中に、日野市で行われているユニバーサルデザインの教育を取り入れ、強力に推し進めれば、この段階の発達障がい施策はクオリティーの高いものが一つ出来上がります。

そのような中で現在、私が研究を深く進めている成人期の発達障害者支援施策の構築は、今まで進めてきた政策の中で、極めて難しい分野の一つです。

幼少期に見過ごされ、成人期まで至ってしまった場合の発達障害者とその当事者を取り巻く家族支援は、当事者のその程度が重ければ重いほど(本人に全く自覚がなく、本人なりの自己改善の見込みが極端にない場合。本人が本人なりの就職を望んだとしても、トラブルが多く定職に付けない。家庭生活も不適応状態が続く状態など。)、第三者が中に入りその促しによって、本人が自らが自己を見つめ直し、改善しようという気持ちがわかなければ、解決の糸口は見いだせません。

 発達障害は外見からはわかりにくいため、自分では一生懸命頑張っていても、周囲から「やる気がない」「変わっている」と誤解されがちです。また、個々に得意、不得意なことの種類も程度も様々で、障害特性の理解をさらに難しくしています。中でも知的を伴わない人は、幼児期や思春期に気になる言動があり本人が生きにくさを感じていたとしても、ある程度カバーできる面がある為、発達障害に気づかれにくくなっています。また、幼少期から青年期にかけて、学力に優れている人も多い為、逆にその面で、学問ができるから大目に見ようとか(通常学級の中では、特に知的を伴わない発達障害があるという認識がなかったために、学力が高い人に関しては、本人が問題行動をしたとしても、個性的な子で片づけられ、本人に対する適切な指導がなされていない状態でした)、ちょっと変わった人、個性的な人、という扱いで幼少期から青年期にかけて見過ごされてきた経緯があります。

 しかし、そのため、より社会性やコミュニケーション能力が求められる青年期や成人期にかけて、対人関係でつまずき、社会に溶け込めない状況が明らかになりました。年齢を重ねるごとに年相応のふるまいを期待されるため、子供の頃に許されていたこともトラブルになりやすく、職を転々としたりして、定職に付けずにいる人や家庭からも受け入れられずに、二次的な障害を誘発し鬱や引きこもりを起こしている人たちがたくさんいます。

日常の生活の中でも、私たちが当然であると想定すること(物事の判断による結果)も、当事者は全く違う感情・感じ方の表現方法を取る為、想定外のことが起きます。それがその状況には当てはまらない、適切でないとしても、本人なりの理屈と本人なりのルールで、その言動を何回も繰り返します。

何回言っても理解しない、適切な行動がとれないために、「何故できないのか?」「こうあるべきだ」と責め立ててしまうと、当事者は、逆にどんどん自分の殻にこもっていってしまいます。学歴がとても高く、知的能力にはずば抜けて人よりも優れているのに、やっていることは稚拙で自己中心的。一つ一つその事例についての説明を丁寧にしたとしても結論は0対100で結局自分の意のままにすべてを進め、自分の理屈を強力に推し進めようとし、何を話しても平行線で話しの着地点が導き出せない状況が続きます。

人の気持ちに立って物事を考えることができない、目の前にいる人の思いに馳せることが全く困難であり、社会適応能力に欠ける、生きる力が備わっていない人たちがいるこの事実、知的な障害はなくとも社会との適応に障害がある当事者たちがたくさんいるというこの現実を私たちはもっと知らなくてはいけません。

そして、そのような当事者たちがいることを社会が把握し、当事者やその当事者を囲む家族支援をどのように構築していくのか、真剣に考えていかなくてはいけない重要施策の一つだと私は考えています。

全国的にも発達障がい施策自体が、社会的な資源も乏しく、その整備が整っていません。足立区からこの施策を強力に推し進め、全国で悩み苦しんでいる多くの人たちが少しでも救われるよう、研究をさらに深めていき、全力でこの施策の構築に取り組みたいと思います。