平成30年3月2日予算特別委員会の内容①【がん支援の確立について】
日本では、一年間に約100万人が新たにがんになると推定される時代です。 都内のがん患者数は30年間で2倍に増加しています。 がんの就労支援は、国が示すがん対策の柱の一つです。
その中で、今年度に多くの区が改定を予定する「がん対策推進計画」にも盛り込まれる予定の中で、足立区ではがん支援が大変遅れています。
がん患者、がん体験者の皆さまは、病院から離れてからが本当の闘いが始まります。
2010年には診療報酬改定で、がん患者、リハビリテーション科、つまりがん患者にリハビリテーションを行うことの診療報酬が始めて設定されました。しかし、入院中の患者に限定されている現状があります。そこで、がん医療が外来中心になりつつある現在、リハビリテーションが外来まで拡大させることが必要です。
しかし、実際は診療報酬改定に向けて、がん患者、がん体験者による支援団体は、関連する学会、協会から国に要望を出している状況ですが、なかなか進まないのが現状です。
がん診療連携拠点病院をがん情報サービスで調べてみると、実際にがん患者さんのリハビリテーションを行っているところは、2016年6月時点、全国で約80%の病院で実施されていました。しかし、いずれも入院中の方が対象となっています。
一般の医療機関でもがんリハビリテーションを行うようになってきましたが、病院の経営や人材不足、また地域格差もあって、ごく一部の患者さんのみに限られてしまっています。
一方、2016年のがん診療連携拠点病院を対象にしたアンケート調査では、外来では2、3割ぐらいしか行われていないそうです。
それに代わるがん支援を行っている民間団体や社団法人と連携をして地域のモデルケースをつくるなど、がん患者やがん体験者の支援を強力に進めることが重要です。
また、がんの相談窓口が全国的に不足している中、がん患者の就労支援や生活に関する支援ができる窓口も必要です。働きながらがん治療を行う人が増える中、他の自治体による支援の動きが出始めています。
港区では都内初の在宅緩和ケアの支援拠点を4月に開設しており、同拠点でがん患者同士の交流場所を設けたり、がんについて学べる講座を開催するなど区民にがんの理解を広める取り組みを行っています。
この予算特別委員会では、先進自治体の事例をモデルにしながら、様々な支援の枠を足立区の行政が行うよう、提案をしました。
検診や治療と並んで大変なのは、がんを患ってから「いかに生きるか」「いかに支えていくか」です。
私はこれからも当事者の皆さまの声を政策に反映しながら、がん患者の皆さまが「自分らしく生きることができる社会」を全力で構築していきたいと思います。
*****以下、委員会での発言要旨(抜粋)です。*****
☆「足立区におけるがん支援の確立」について
<長谷川たかこ委員>
午後一番で質疑をさせていただきます長谷川たかこです。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、私からは、足立区におけるがん支援の確立について提案をさせていただきます。
がんは日本人の死因の第1位であり、年間約37万人が死亡し、生涯のうちに2人に1人ががんにかかる可能性があるなど、国民にとって重大な問題です。
政府はがん対策基本法に基づき、がん対策推進基本計画を策定し、がん医療、がん予防、早期発見等にかかわる各種対策を推進しています。しかし、基本計画の全体目標である、がんの年齢調整死亡率75歳未満の20%減少は、達成困難と予測されています。
また、がん検診受診率は諸外国に比べて、緩和ケアの浸透は不十分、がん患者及びその家族への支援相談の充実が必要であるとの指摘があります。
そこで、がん患者が尊厳を維持しながら安心して暮らすことができる社会を構築することが必要と考えます。がん患者が医療のみならず、日々の暮らしの中で福祉的な支援や就労支援など、当事者が必要と考える支援を受けることができる整備を、この足立区でも是非とも進めていただきたいと思います。
現在、がんは治る病気になりましたが、その分、がん体験者が増えています。AYA世代、つまり15歳から30歳前後の思春期、若年成人、中高年のがん体験者も増えている中で、その後の人生を行政がサポートし、早期に社会に復帰できることが、日本においてこれから迎える超高齢化社会に向けた重要な課題になってくることと思われます。
がんに罹患したことで休職したり、再就職ができなくなるなど、当事者の皆さんは就労に悩まされています。がん対策推進基本計画では、働く世代へのがん対策が重点課題に位置づけられています。まず、足立区ではがんに罹患した方々に対し、就労支援をどのようにされているのか、具体的にお答えください。
【データヘルス推進課長】
現在、区のほうでがんに罹患した方に対する、特に就労支援ということは行っておりませんが、がん患者の就労については、やはり企業側の意識の啓発が大事かと思っておりますので、今後どのようなことができるかということについては、研究していきたいと思っております。
<長谷川たかこ委員>
東京都では平成30年度の予算として、がん患者の治療と仕事の両立支援事業を計上しています。ライフスタイルに沿ったがん治療を受けることができるよう、検討会の設置とがん患者の就労等に関する実態調査が盛り込まれています。足立区においても、東京都の事業を活用して、実態調査などから是非とも始めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
【データヘルス推進課長】
東京都の来年度予算のこの事業については、把握はしてございますけれども、実態調査を東京都がやるということでございますので、その結果等を踏まえて、区としてもどのようなことができるかということで研究していきたいと思います。
<長谷川たかこ委員>
東京都の予算として、これ盛り込まれるというのは各自治体のほうにも落とし込まれて、市区町村の調査とかが予算の計上になっているかと思いますが、いかがですか。
【データヘルス推進課長】
私のほうで東京都の予算の概要というところで確認したところですと、1,000万円で東京都がこの実態調査について直接委託をかけるということで聞いておりましたので、その推移を見守ろうかという答弁をさせていただきました。
<長谷川たかこ委員>
了解しました。よろしくお願いします。
国の厚労省のほうでは、既にハローワークに就労支援ナビゲータを配置し、がん診療連携拠点病院などとの連携のもと、個々の患者の希望や治療状況を踏まえた職業相談、職業紹介、患者の希望する労働条件に応じた求人の開拓、患者への就職後の職場定着の支援などの就職支援を全国的に実施しているそうです。
現在、東京都では唯一、飯田橋公共職業安定所が行っていますが、足立区の公共職業安定所でも同じような形で是非とも進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
【データヘルス推進課長】
この事業は国のほうで拡大しておりまして、今年度から各都道府県一つずつというところで、飯田橋が選ばれたと聞いております。
足立区のハローワークにもそういったところで、できるかどうかについては、今後、具体的に伝えていこうと考えております。
<長谷川たかこ委員>
是非連携しながらお願いしたいところです。
先ほど企業側の周知啓発についても、今後検討していただけるというお話でしたが、この企業側の理解というのはとても重要だと感じます。
是非、その認識を企業側に、がんに対する認識を深める働きかけをしていただきたいと思いますが、今後どのような形で働きかけをしようとご検討していらっしゃいますか。
【データヘルス推進課長】
委員おっしゃるように、企業側の理解ということについては、がん対策基本法の中にも記載がございます。そのため、具体的にというところではまだ研究中ですが、企業の事業主の責務やがんに対する理解に対して、区がどうやって支援、普及啓発できるかというところを引き続き研究していきたいと考えております。
<長谷川たかこ委員>
研究をしながら、効果的な取り組みを行っていただきたいと切に願っております。
がんに罹患した方々から、私は直接お聞きしております。
治療中に伴う脱毛のためにウィッグが必要だったり、乳がんの手術後の乳房再建手術や術後の跡の形を整える胸部補整具の費用などにお金がとてもかかるそうです。
港区では、昨年からこの胸部補整具の購入費の助成を行っていて、3万円か購入費の7割のいずれか低い額を助成するとしています。
神奈川県大和市では2015年の4月から、神奈川県横浜市、栃木県栃木市が2016年4月から、ウィッグに関しての購入費用の一部助成を行っており、秋田県能代市と鳥取県が2016年4月からウィッグと胸部補整具について、ともに助成制度の対象としています。
足立区においてもがん支援の一つとして、是非ともウィッグやがんの施術跡を整える下着などを購入する補助をしていただきたいと思いますが、区の見解をお願いします。
【データヘルス推進課長】
区としてがん対策については、今のところ、まずがんの早期発見、早期治療ということで検診の受診率向上を高めていきたいと考えております。
ご質問のいろいろなウィッグや下着の購入につきましては、今後どのようなことが、先進自治体の事例を参考にしながら研究していきたいと考えています。
<長谷川たかこ委員>
足立区は本当にこれからという形なのかなと、東京都23区の調査をさせて頂きましたが、足立区が一番施策として乏しい状況でした。区として今後、研究をしながら建設的に取り組みを考えていただきたいと思います。
また、他区の事例になりますが、港区においては、脱毛やウィッグ選び、地毛のケアや爪や肌の変色への対応といった、がんの治療に伴う外見変化に関する相談に対して、がん患者の支援に関する連携協定を結んでいるアピアランサーアドバイザーがいて、無料で相談が受けられるそうです。
足立区でもこのような先進自治体に倣って、がん支援を行っている企業、団体と連携をしながら、アピアランスサポート相談室を開設していただきたいと思います。
実際に企業側のほうからもお声をいただいているところですが、いかがでしょうか。
【データヘルス推進課長】
区のほうでは、乳がんの体験者の会ということで、たんぽぽの会というところが活動してございます。
千住保健センターのほうで定期的に相談等に乗っていたりもしますので、そういった集まりですとか、サークルを活用しつつ、足りない部分については他の、もし効果的な団体等があれば、一緒に考えていきたいと思っております。
<長谷川たかこ委員>
現在、足立区内でも二つの任意団体があるということは私も知っております。
実際にがん体験者の方からのお声で、集まっている年齢層や、その団体の活動内容が自分には合わない、ちょっと物足りない、マッチングが合わないというお声をいただいております。
様々な支援の枠を足立区の行政で整えていただければ、選ぶ方々にとって選択肢が広がると思います。
今から私の方で色々お示しさせていただきますが、そのような団体とも連携を区として行っていただきたいと要望をさせていただきます。
今、お話したように、がん体験者の方々、やはりがん患者のための運動療法の学びとか、術後のセルフケア、治療の継続のための体力、それから、早期社会復帰のためのリハビリとして自信を取り戻せるメンタルケアとして、色々なものが大切であると当事者団体より直接お聞きしています。
当時者団体からお話をお聞きしました。
現在の医療システムでは、その後のケアまでのサポート、つまり、がんリハビリテーションを受けられない状況があるそうです。
しかし、いつも体の不調を抱えていなければならないことは苦しいことでもあるそうです。
その辛い症状をいかに楽にするか、実は病院から離れてからが本当の闘いが始まるとおっしゃっていました。
2010年には診療報酬改定で、がん患者、リハビリテーション科、つまりがん患者にリハビリテーションを行うことの診療報酬が始めて設定されました。しかし、入院中の患者に限定されています。がん医療が外来中心になりつつある現在、リハビリテーションが外来まで拡大されることが必要であり、診療報酬改定に向けて、がん患者、がん体験者による支援団体は、関連する学会、協会から国に要望を出している状況ですが、なかなか進まないのが現状だそうです。
がん診療連携拠点病院を、がん情報サービスで調べてみると、実際にがん患者さんのリハビリテーションを行っているところは、2016年6月時点、全国で約80%の病院で実施されていました。しかし、いずれも入院中の方が対象となっています。
一般の医療機関でもがんリハビリテーションを行うようになってきましたが、病院の経営や人材不足、また地域格差もあって、ごく一部の患者さんのみに限られてしまっています。
一方、2016年のがん診療連携拠点病院を対象にしたアンケート調査では、外来では2、3割ぐらいしか行われていないそうです。
このような経験をお持ちのがん体験者が一般社団法人キャンサーフィットネスを立ち上げています。
この団体は運動教室やヘルスアカデミー講座を通して、がん患者、がん体験者を支援しているところです。現在、この団体はがんリハビリテーション、医師監修のもと、地域の民間スポーツクラブで体力回復のための運動教室の実現に向け、活動を進めています。地域のがん患者が、無料又は負担が少ない金額で数回のプログラムを受けることで、今後の社会復帰のために、運動で体力をつけ、その後の人生のQOLを向上させる支援プログラムを提案しています。
高齢者がん社会に向けて、一般の方の運動期症候群の早期化が問題になっていますが、体力、筋力が弱くなることで、要支援介護の可能性が高くなることが分かっています。
現在、既にがん患者の運動器症候群も問題になってきていますが、急激な高齢化社会になることを考えても、高齢のがん体験者が増えていく状況の中で、がん治療後の筋力維持、向上のためのケア、運動は健康寿命の取り組みとして大切であり、特に医療費削減効果については有意に大きいものと言われています。
食生活や生活習慣の見直しや健康づくり、体力づくりをするためにも、がん患者、がん体験者とその家族が住みなれた地域で可能な限り質の高い生活を送れるよう、足立区としてもがん支援を行っている民間団体や社団法人、例えば地域のスポーツクラブと連携をして地域のモデルケースをつくっていただき、がん患者やがん体験者の支援を是非とも行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
【データヘルス推進課長】
先ほど申し上げたとおり、区内のがん体験者の会というのは二つでございますので、今後、がん患者の支援のためにどのような団体と連携していくことが効果的かどうかというところも含めて研究していきたいと思っております。
<長谷川たかこ委員>
がんサバイバーの方々から要望があがっており、当事者からは、大変効果が高いと言われていることです。以上のことを鑑みながら、早急に構築していただきたいと思います。
次に、がん患者やその家族が、病院だけでなく自分たちが本当に望む環境を生活の場として住みなれた地域で緩和ケアを受けられることを望んでいます。
患者やその家族が希望した場所で満足のいく療養を行うことができるよう、医療、看護、福祉のネットワークを構築し、足立区全体の在宅緩和ケアを受けられるように、是非していただきたいと要望します。
港区は今年4月にがん患者の在宅療養の支援拠点として、白金台の区立のがん在宅緩和ケア支援センターを開設します。がんの医療や在宅緩和ケアに関する相談を、電話や面談で受け、患者やその家族が気軽に交流できる場を提供するそうです。
機能は、相談、交流、普及啓発、人材育成です。がんに関する医療や在宅緩和ケアに関する電話相談、面談相談、がん治療によって生じる外見の変化に関するアピアランス支援やがん療養に適した料理教室などの在宅療養生活支援、がん患者、家族、支援者などが気軽に交流できる場の提供などが盛り込まれています。
先ほども申しましたように、病院を退院した後が本当の闘いだとがん体験者の皆さんもおっしゃっていました。
実際に自分が住んでいるところで、その後のケアを受けようとしても、実際にはこの足立区においては何もないのが現状です。がん患者に対するケアのシステムが各自治体においても大変乏しい状況ですが、今年の4月から港区とがん患者とその家族が住みなれた地域で質の高い生活を送れるようにと、手厚い支援施策を用意します。
足立区でも各種医療機関、団体と連携をして、在宅緩和ケア支援センターの設置を求めますが、いかがでしょうか。
【地域包括ケアシステム推進担当課長】
足立区でも地域包括ケアシステムの中で要介護連携推進の中で在宅を継続すること、特に、委員おっしゃったとおり、退院の支援というところも含めまして、平成30年度から、がんの治療も含めた在宅療養を進めるための相談支援窓口の開設に向けて準備をしております。
まずは、この窓口支援でがん患者の支援体制についても支援してまいりたいと思っております。
<長谷川たかこ委員>
平成30年7月からその在宅療養支援窓口の開設が行われるかと思いますが、是非この中にその期間の在宅緩和ケアなども含めた、末期がんにかかわらず、その在宅緩和ケアに関するシステムを強力に構築していただきたいと思います。
今回、平成30年度の東京都予算においても、この緩和ケア推進事業が掲げられてます。
足立区はこの事業についてどのように関係していこうとお考えでしょうか。
【地域包括ケアシステム推進担当課長】
緩和ケア推進事業につきましては、東京都のほうで行われていることは認識してございます。委員おっしゃったとおり、病院と連携しながら、その医師会又は訪問看護等の連携の中での支援体制というところに、今回支援窓口の経験をもとにノウハウを蓄積して一緒に対応していきたいと考えております。
<長谷川たかこ委員>
私が今まで申し上げたことは、全てそのがん患者、それから、がん体験者の方々からいただいた痛切なお声であり、そのご要望です。
この足立区においては、23区で見てても、がん患者、がん体験者に対しての支援がとても乏しいという状況です。是非とも患者や体験者の皆さん、その家族が住みなれた地域で質の高い生活が送れるよう、手厚い支援施策を早急に構築していただきたいと思います。
よろしくお願い致します。