重症心身障がい児とその家族を支援する施設「療育室つばさ」をご訪問しました
扇にある「療育室つばさ」をご訪問させて頂きました。
「療育室つばさ」は、2012年7月に重症心身障がい児とその家族を支援するために開設された施設です。1日定員5名の通園施設です。完全個別対応、統合保育、音楽療法などを中心に活動をされ、他団体との協働により、地域の子育てサロンや児童館にて地域の子ども達も参加できる催し物を定期的に開催し、2015年には障がい児相談支援事業も設置、2016年には拠点を足立区新田から足立区扇に移転させ、「FLAP-YARD」を建設されました。現在では、放課後ディサービス事業と居宅介護事業も行い、0~18歳までの重症心身障がい児を対象にしたホームヘルパー派遣もされています。
日本の高度な医療技術の進歩により、以前では助からなかった命が、多様な障がいがあっても命をつなげることができるようになりました。その結果、今ある支援制度が追い付かなくなり、医療・福祉・教育が連携した小児在宅支援の整備を求める、当事者の声が上がっています。今まで存在しないであろうと言われた状態の子ども達の命がつながり、様々な課題があります。
私はこの問題を2017年から取り組んでおります。
国では2021年6月に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が可決され、同年9月に施行されました。医療的ケア児を育てる家族の負担を軽減し、医療的ケア児の健やかな成長を図ると共に家族の離職を防止するための法律です。このことにより、医療的ケア児を法律上で明確に定義し、国や地方自治体が医療的ケア児の支援を行う責務を負うこと、保育園や学校の設置などに支援措置の責務があることが明文化されました。
医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の施行を受け、都道府県は設置主体となる医療的ケア児支援センターを令和4年度中に都内2か所に開設を予定しています。
しかし、東京都が設置する医療的ケア児支援センターと区市町村の機能分担はまだ明確になっていません。
令和3年度に実施した足立区における区内医療的ケア児の実態調査では、20歳未満で医療的ケア児を必要とする人数は91名であることが判明しました。
【令和3年4月1日状況】
0~5歳 40人
6~11歳 29人
12~14歳 6人
15~17歳 9人
18歳以上 7人
【医療的ケアの状況は重複あり】
吸引59人
経管(経鼻・胃ろう)54人
人工呼吸器管理47人
酸素吸入35人
気管内挿管・気管切開34人
足立区では、医療的ケア児の支援に関する保健、医療、障がい福祉、保育、教育などの関係者間の連絡調整や情報交換を図ることを目的として令和元年度から医療的ケア児ネットワーク協議会が設置されました。学識経験者や医療・教育関係者の外部委員15名と庁内委員12名構成です。令和3年度までに計6回行われ、以下の内容が検討課題となっています。
・医療的ケア児支援に関して、地域の課題や対応策について意見交換や情報共有を図った。大規模水害時の批難や対策など、当事者・関係者の意見を聴収し、区の施策につなげてきた。
・医療的ケア児の相談は、必要な情報にホームページから容易にアクセスでき、オンラインで相談できるほうが良いという意見が多かった。
・保育園で医療的ケア児の受け入れが始まり、学校での受け入れが次の課題となっているため、別の作業部会を設け検討予定。
令和3年4月から足立区における区内保育園3園での医療的ケア児受け入れが開始されています。令和4年度は2名新規入園し、3園5名の児童の受け入れを実施しているところです。現在、集団保育が可能であるとの主治医意見がある場合には、保育園・こども園における重症心身障がい児の受け入れをしており、令和4年5月1日現在では、10園で12名の保育を実施しています。
令和3年10月から小学校・保育園関係者、養護教諭等、関係所管で構成される作業部会を設置し、就学前後の切れ目のない医療的ケア児支援体制について継続検討をしている段階です。令和4年度より足立区平野小学校・東綾瀬小学校において医療的ケア児支援のモデル実施を予定しています。
現在、医療的ケア児、重症心身障がい児に係る窓口に現状は以下の通りです。
重症心身障がい児施設の入所・通所…東京都児童相談書
身体障がい者手帳・愛の手帳を所持する児童の児童発達支援や短期入所…障害福祉課・各援護係
在宅重症心身障がい児(者)訪問事業、特定疾病(難病)の医療費助成…各保健センター
医療的ケア児の保育に関する相談…こども支援センターげんき
多様化の認知と仲間づくり、支援の連携から必要な在宅ケアとショートレスパイト。年齢ごとに提供できるサービスを構築し、障がい者保護者の働き方の仕組みを構築し、父親の仕事のしやすさ、母親の社会とのつながり、本人の幸せを考えた仕組みを検討していく事が喫緊の課題です。今後、駆け足となりますが、成長と共に見えてくる課題をいち早く吸い上げ、事業者との連携を強固にし、必要とされる支援を早急に構築していくことが求められます。