【10/30文教委員会視察2日目:大阪府寝屋川市:寝屋川モデル「いじめ0」に向けた取組みについて】
大阪府寝屋川市では行われている「いじめゼロ」に向けた取り組みが全国的に注目されています。足立区議会においても、寝屋川モデル「いじめ0」の視察に行ってきました。
文部科学省の調査では、いじめ認知件数や不登校者数は増加の一途を辿っています。文部科学省の2020年度「不登校児童生徒の実態調査」では、不登校児童生徒の内の約25%が、「不登校のきっかけは、いやがらせや、いじめ」と回答しています。いじめ被害者には、登校できない、登校しても学級に入れない、時には、命を失うなど、悪影響がでます。また、いじめ加害者が24歳までに犯罪者になる確率は、いじめ加害者ではない子どもの6倍という研究もあります。このように、いじめの問題は、由々しき問題です。
いじめは子どもの命と尊厳を脅かす重大な人権侵害です。
しかし、これまでの対応は学校と教育委員会の「教育的指導」に委ねられることが多く、事態の長期化や被害者保護の遅れが問題視されてきました。
「教育的アプローチ」「行政的アプローチ」「法的アプローチ」を組み合わせた通称「寝屋川モデル」。このモデルは、いじめを「人権侵害」と明確に位置づけ、市長部局(行政)が第三者の視点と強力な権限を持って介入する点に最大の特長があります。
寝屋川市では、令和元年10月、市長部局の危機管理部に監査課を設置し、市独自のいじめ対策を開始しました。教育的な指導による人間関係の再構築を目的とした教育的アプローチと、いじめを人権問題として捉え、被害者と加害者の概念を用い、いじめを即時に停止させる行政的アプローチを確立させています。この2つのルートを確保していることで、子どもたちや保護者の方が望む形の解決を選択でき、いじめの早期解決と抑止が図られています。
詳細を見ていきましょう。先ずは条例制定からです。
学校現場では決定権が校長の裁量により、中々前進しないという、保護者からしてみると学校の対応が遅いと言わざるを得ない状況がありましたが、この条例により、行政の権限で迅速に推進することを可能にしました。
✩「子どもたちをいじめから守るための条例」令和2年1月1日施行
〈目的〉
いじめが子ども達の人権侵害に関する問題であることに鑑み、いじめゼロに向け市長部局で新たな取組を行うべく、児童などの命と尊厳を守るため、いじめの防止に関して必要な事項を定める。
〈特徴〉
寝屋川市に対して、いじめに関する情報提供を行う責務を負う。
〈市長の権限の明示〉
いじめの防止の申し出があった時の必要な調査を行う事が出来る。
学校その他の寝屋川市の機関に対して、以下の措置を講ずべきことを勧告できる。
- 児童に対する見守り
- いじめ防止の環境整備
- 訓告・別室指導その他の懲戒
- 出席停止
- 学級替え
- 転校の相談及び支援 など
市長部局の監察課の設置により、いじめ問題に対する市長のリーダーシップと行政の強力な介入が法的に認められています。
これらの措置は、主に被害者の安全確保といじめの即時停止を目的としたものです。
【いじめ対応の三権分立】
✩教育的アプローチ
学校・教育委員会による通常のいじめ対応を行う役割
「教育的アプローチ」は「いじめの予防・見守り」に注力
✩行政的アプローチ
市長部局「監察課」によるいじめ対応の役割
児童・生徒に「被害児童・生徒」、「加害児童・生徒」という概念を導入して児童生徒を1人の市民として、人権問題として扱う。
✩上記の2つのルート(教育的・行政的アプローチ)を並走させてWチェック
第3者的視点でいじめ対応の不備をチェックし、事後の検証を実施。目的の違う2つのルートを示すことで、相談者が望む形の解決を選択して、専門的な対応を行っています。行政アプローチが入ることで、教職員の負担軽減につながります。
✩法的アプローチ
賠償請求などの民事訴訟や刑事告訴の支援、弁護士費用が補助されます。
・弁護士費用等支援事業…いじめを解決するための弁護士への相談、委任に関わる費用
いじめ事案1件当たり30万円
・転校費用等支援事業…児童等の転校に要する費用
制服・体操服などの物品購入費用・通学のための交通費
いじめ1件当たり15万円
・いじめ被害者所有物に係る原状回復支援事業
被害を受けた物品の買換えに要する購入費
いじめ1件当たり1万円
【攻めの情報収集】
毎月1回、通報ビラを全校に配布し、封をしてポスト投函すれば監察課へ届く仕組みになっているそうです。届いた当日か翌日には、監察課が学校へ聞き取りにやってくるというルールとなっています。継続的に周知啓発も含めた行政の努力により、クラス内の通報文化を高める攻めの情報収集と考え、効果を上げているそうです。
寝屋川モデルは、いじめ問題に対する社会全体の意識改革を促し、効果を上げています。第三者である監察課が介入することで、学校内の校長裁量、校長の手腕で左右されるのではなく、被害者の意向を最大限に尊重した解決策が選択できるようになった画期的な取組です。
今後の課題は、いじめ加害者に対する強い規制を与えたいとのお話でした。学校の裁量と市長部局による働きかけで今は被害者自身の転校支援などが焦点になっていますが、今後は加害者に対する転校を求める事が出来る体制も構築していきたいとのお話でした。
大切な未来ある子ども達を守るため、足立区として、いじめ被害で苦しむ子ども達が少しでも減り、加害者の子ども達も自分が行ったことに対する行為を反省し、いじめが無くなる世の中を全力で構築していきたいと思います。
ご丁寧なご対応をくださり、寝屋川市の執行機関の皆様、そして帰り際、大変お心遣いをして下さいました足立区の執行機関の皆様には、大変感謝申し上げます。ありがとうございました。
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#大阪府寝屋川市いじめ対策
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