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学校不適応と不登校の対応を考える~発達の課題の共有とサポート~

今日は北千住シアター1010で、日頃からご教授いただいている鳥取大学医学系研究科 教授の井上雅彦先生による講演を拝聴しました。臨床心理学講座です。

文部科学省による不登校は「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にある為、年間30日以上欠席した者のうち病気や経済的な理由によるものを除いたものとする」という定義となっています。

不登校のきっかけや継続要因は複雑化しており、対応には個々の子どもの実態把握が必須です。

不登校の実態としては、以下の内容が挙げられるそうです。
・どの事例にも共通の唯一の原因があるわけではない(個々の実態把握が必要)
・不安や無気力(きっかけの第一位)
単に促すだけ、待つだけでは解消は困難
家庭や学校の環境ごとに調整とスモールステップ
・年齢が上がるごとに学習不振が増加
再発リスクに対する支援
学習支援、対人関係支援が必要
・長期化する場合の社会参加困難
早期対応が必要
ベースに発達障がいがある場合、立ち直りにくい

発達障がいと不登校との関連性については、
・高機能PDD児が不登校になる率が児健常児と比較して高い
・不登校のパターンをいじめなどの迫害体験をきっかけにするものと学校がつまらない、不快な出来事が多い場面への参加を拒否するパターンがある
・医療機関を訪れた不登校の子どもにおける発達障がいを背景に持つ割合が20~30%(内訳ではPDDが一番多い)
・知的障害を伴う子供も20%
・一次医療から二次医療、三次医療とより専門機関になるほどその比率は高くなる
・不登校の出現時期について、発達障がいを背景としない不登校よりも早い時期、小学校3年生以前に表れやすい
以上の点が特徴として現れるそうです。

発達障がいのある子どもの不登校リスクは高く、予防には「教師の理解」と「障がい特性への配慮」が必要となるそうです。早期対応の遅れによるひきこもり、昼夜逆転、家庭内暴力などのリスクが高く、不安などの心理的問題に加えて学習や対人関係に課題を持つそうです。また環境調整なしの回復が困難で復帰した後の支援の有無が再発を左右するとのこと。

定型発達児に比べて発達障がい児の不登校は遷延しやすく再登校へつなげるのが困難な事例が多いことからひきこもりとの関連性も指摘されています。

早期からその子どもの特性に合わせた子育てと教育環境の整備を進めることで、適応が改善されることがわかってきているそうです。発達障がいの特性は成長の中で、虐待、いじめ、不登校、引きこもり、様々な精神疾患に対する関連性が指摘されており、早期からの「気づき」と「支援」が重要であると井上雅彦先生はおっしゃっていました。

発達障がいは、医学、教育、福祉そして心理面からのアプローチが重要であり、本人の特性に基づいた子育て環境、教育環境の整備をベースにした認知行動療法などの心理社会的アプローチと適切な薬物療法の組み合わせにより、その困難性を軽減し、本人の持つ「強み」を引き出すことで、社会の中で活躍していくことができます。

一番困難を感じているのは本人です。一人ひとりの悩みは異なり、それに向き合うペースも違うものです。特に子どもの場合には自分がつらく感じていることに向き合うことが困難だったり、話ができるようになるまでに長い時間がかかる場合もあります。自分の「弱み」に気づくことだけではなく、自分の「強み」に気づくことで、「弱み」に正しく向き合えるようになることがポイントでもあるようです。

井上先生からは、例えば、私たちの持っている個性は
• 「周囲のことを考えずに突っ走ってしまう」→「すばらしい行動力!」
• 「考えすぎて決断できない」→「思慮深く物事を深く考えることができる!」
• 「物事にこだわってしまう」→「すごい粘り強さと集中力!」
というように、「良い」とか「良くない」という一方的な側面ではなく、その事象をどちらから考えるか、という見方をすることが大切であるとおっしゃってました。

周囲から叱られ、傷つけられ、失敗体験が重なった場合、自分自身を悪い方からしか考えられなくなってしまうことがあるけれども、そうではなく、困った点や苦手なことの中には、とってもすばらしい宝物が眠っているということに気づくことが大切であり、どのように自分自身の強みを生かしていのくか、己を発展していく力を身に着けるのか、このことが長い人生を歩むうえでの生きづらさを解消していくことにもつながっていくのだと感じました。

今日は、様々な学びと発見を頂きました。
井上先生からの学びを自分の人生の糧として、そして今後の足立区教育行政の中にしっかりと落とし込んでいきたいと思います。
井上先生、いつもありがとうございます。

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鳥取大学医学系研究科 教授の井上雅彦先生によるご講演です。