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上沼田小学校 通級指導学級(情緒等)について 視察

今日は午前、午後と視察に行きました。

最初は、足立区上沼田小学校の通級指導学級(情緒等)についての視察です。

通級指導学級に通っている児童たちの指導内容について、授業の見学と校長先生はじめ担当の先生方から具体的なお話しをお聞きしてきました。

この通級指導学級は、現在、足立区では上沼田小学校だけでなく、足立区小学校全70校に対して辰沼小学校、保木間小学校と3校が行っています。

この上沼田小学校に通っている児童は計53名(内 男子49名・女子4名)。

公立小学校に在籍している児童が対象で、知的な障害はなく、下記のような様々な行動特性のある子ども達が各学級において不適応を示し、通っています。

・同学年の友達と人間関係を築くのが苦手。

・初めて体験することや、いつもと違う環境に強い不安を示す。

・授業中に立ち歩くなど落ち着きがない。

・まわりのちょっとしたことに気を取られ、授業に集中することが難しい。

・興味・関心の偏りが強く周囲から異質に見られがち。

・集団行動が苦手で、集団から外れてしまうことが多い。

・細かな手先の作業や全身運動が極端に苦手。

・身の回りの整理整頓が苦手。

・特定の強化や一部の学習での躓きが大きく目立つ。

・不安感が強く、登校しぶりが見られる。

・自分の気持ちを言葉で表現したり、伝えたりすることが苦手。

・場面緘黙や神経症の習癖(チック・極端な指しゃぶり等)が見られる。

上記のような状態が見られなくても、通級指導が必要と感じられる場合には適宜、相談に応じるそうです。

この通級指導学級に通う児童は、現在通っている学校に学籍を置いたまま、決められた曜日にコミュニケーション教室に通い、学習をしています。通級した日には、在籍校の出席扱いとなります。

ここでの指導の重点は、情緒の安定を図り、人との関わり方や態度を身に付けさせ、集団への適応能力の育成を図ることです。また、言語による意思の伝達、コミュニケーション能力の向上も図ります。様々な活動を通して、感覚的機能、判断力、手指の構築性を向上させ、学習の基本的な能力の向上を促すそうです。また、基本的生活習慣(挨拶・衛生・安全・身だしなみ・後片付け)を身に付けさせます。

実際の授業では、小集団活動を通じて、集団適応能力の向上やコミュニケーション能力の向上を目指していくプログラムになっています。子ども達7人に対して7人の先生方が児童をフォローしていました。また、メインの先生が一人いて他6人の先生方が児童一人ひとりをきめ細やかにフォローしている状況でもありました。指導後には担任全員が話し合いを行い、一日の反省や今後の指導の方針、さらによりよい学習計画について考えているそうです。

拝見させていただいた授業の後には、個別学習が設けられていましたが、個別指導は個人的な領域に深く入るため、見学をすることは出来ませんでした。

個別学習では、担当の先生と児童が1対1(場合によっては1対2もしくはグループ)で関わり、実態に合わせて自信と意欲を高めるよう支援をしていくそうです。

個別学習の狙いは以下の4点に集約をされています。

1.児童の実態を踏まえ、個々の興味・関心を考慮し、その子に合った教材を適宜用意して達成感・満足感を味わわせ自身につなげる。

2.児童の実態を的確に把握したうえで、ここに合った課題を設定し、個別に指導をすることにより「聞く」「見る」「書く」「(指先で)操作する」「(道具を)扱う」「聞きながら○○を行う」「見ながら○○をする」といった力を高める。

3.児童の話に耳を傾け、今、考えていること、困っていることを良く聞いて相談に乗り、適切なアドバイスをして情緒の安定を図る。

4.強化の補充学習では、基礎学力の定着を図り、勉強に対して苦手意識を持っている児童が自信と意欲を持って高めることが出来る様支援をする。学習内容は個々によって異なるが、スモールステップで進めていく。

また年に2回親子体験学習を行っていて、親と子が一緒に活動し触れ合いながら楽しい時間を過ごせるように、その日に集まった親同士が交流する場を設けているそうです。それぞれの親が抱えている悩みを話すことで困り感を共有できる場を提供しているそうです。

ここでは、保護者、在籍校の担任向けに保護者会や在籍校担任連絡会を開催して、大学の先生や専門機関の先生の話を聞く機会を設けています。連絡ファイルや教室便りなどを通じてこまめに連絡を取り合い、児童についての共通理解を図り、状態の改善に努力しているそうです。

この通級学級に通っている子供たちは、何かしらの困り感を抱えています。それは発達障害の特性であったりと様々です。現在、文科省の試算では、通常学級の中に知的障害を伴わない発達障害傾向のある子ども達が約6.5%学級の中にいます。この発達障害は先天的な障害ではありますが、外見的には見えにくい、わかりにくい障害です。その為、必ずしも幼少期の時に障害に気付くとは限りません。小学校に通うようになってから、その特性が誘引され、抑うつ・不安状態などから不登校につながり、何かしらの不適応状態が学校生活の中で顕著に出るようになります。中には、この通級指導に乗らない隠れたグレーゾーンの児童もいます。そしてその子供たちの状態が悪化し不登校になってから、やっと通級指導に乗るという子ども達を現に私は地元の小学校でも見てきました。

これまで、発達障害は社会的な整備が乏しかったために、個々に合わせた適切な対応や支援が未整備のままでした。現場でも親と子が心を共有できないという悩みが増えています。学校支援の在り方が今後問われている状況との話を専門機関からも伺っています。

まだこの通級指導に上がってくる子供たちは救われると私は確信しています。

しかし、この支援に乗らない子ども達をどのように支援していくのか。

通常学級の中にいるグレーゾーンの子ども達に対しての的確な対応と支援を行うためには、教員それぞれの意識を向上させ、どのクラスにも困り感を持った子供たちが必ず存在することから認識を共有し理解を深めなくていかなくてはいけません。その子供たちに対する十分な理解と支援を行うためには、発達障害という特性を正しい理解で知ること、その個人の特性に合った支援を的確に行うこと、現場力を高めることが求められます。

各学年の年齢によって発達障害の特性の出方は変わってきます。

低学年のうちは学習のむずかしさや多動性や衝動性が顕著に出ていても、高学年になると多動性や衝動性は目立たなくなり、こだわりやコミュニケーション障害による生活のしづらさやトラブルの面が顕著に出てきます。

そのような特性を持ち合わせている子供たちに対して、どのように対応し、どのようにその状況を改善させていくのか、その対応を的確に学校が通常学級の中で行えば2次的な症状(抑うつ症状・対人恐怖・集団恐怖など)を早期に予防することができます。

この通級指導学級の支援方法は通常学級にいるグレーゾーンの児童たちにも拡充して行うべきであり、特別支援教育を視点に入れたユニバーサルデザインの教育に落とし込むべき内容でもあると私は考えます。