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神奈川県立田奈高校「かながわ支援教育」について 視察①

今日は午後から神奈川県立田奈高校へ視察に伺いました。

発達障害当事者会「イイトコサガシ」のスタッフの臨床心理士の先生と一緒です。

田奈高校は平成21年度より神奈川県教育委員会から「クリエイティブスクール」の指定を受けています。

中学校までにもてる力を必ずしも十分に発揮できなかった生徒を積極的に受け入れ、この学校での3年間の様々な教育活動を通して、これからの社会生活をよりよいものにする意欲と他者とのかかわりを大切にしながら主体的に学び、考え、行動をする社会実践力を育むことを目標としています。

中学校までに持てる力を発揮できなかった背景には、中学校以前の基礎・基本的な学力や、基本的な生活習慣が身についていないなどの顕著化している事象の中に、家庭環境、経済状況、心身の発達(発達障害などの精神疾患など)の状況など複合的に様々な要因が挙げられます。

中でも、些細なことでキレやすかったり、学校を欠席しがちであったり、学習内容を理解することが難しかったりと、様々な課題を抱えている生徒たちに対して、以前から、田奈高校としては、彼らの困り感を的確に捉え粘り強く対応をしたところ、結果として退学率が激減したそうです。

そのような状況を踏まえ、クリエイティブスクールの指定を受ける前から、生徒との対話を重視することで生徒の困り感のサインを見逃さないという教育相談に適した土壌が既にあったそうです。

現在では、生徒の特性を捉えた教育実践を行うほか、専門家や研究者による学習相談、巡回相談などの外部資源を効果的に活用した学習支援やキャリア教育を中心とする進路支援など、生徒一人ひとりの教育的ニーズに対応した支援を可能にする充実した支援体制を構築しています。

田奈高校の特色として一番に挙げられることは、先ずは生徒の話しを傾聴する事から始めます。また、気になる生徒に対しては、予防的な措置として、授業中の校内巡回や、休み時間に校門で教員が立ち番をする体制を整えています。その中で、例えば「いつもがんばっているあの子が、さっきの授業中に机に突っ伏していた」「いつも昼食を友人と食べている生徒が、今日は一人で食べている」など気になることが観察されています。

巡回や立ち番は、生徒の問題行動を予防するだけでなく、生徒と教師の対話の機会にもつながっています。「最近、顔を見なかったけど大丈夫?」とか「実は今、やばいんだ」など、生徒の困っていることが語られることも多々あるそうです。

さらに提出物やテストなどから生徒の困難さが把握されることも多いそうです。漢字の書き取りに熱心に取り組む生徒が、小テストになると殆ど書くことができないとか、特別指導になった生徒が反省文を書くときに自分の気持ちを書くことができないこともあるそうです。

教師は生徒達に積極的に立ち話の意味でフットワークよくあちらこちらを歩き回りながら話をしています(この制度をオン・ザ・フライ・ミーティングと呼んでいます)。

生徒指導上の問題行動を予防する観点から、以前より教職員同士の対話が盛んであり、情報交換が頻繁に行われていたそうです。その発展が「オン・ザ・フライ・ミーティング」へとつながっているそうです。

教員が気になる生徒達を観察し、そこで得られた生徒の様子を職員室であったり、昼食時の食事コーナーであったり、学年の教室や廊下での立ち話で等、様々な所で話題にして、情報を共有しているそうです。例えば、「さっきの時間、あの子がイライラしているみたいだけど、なにかあるのかな」「お母さんと喧嘩したみたいで、昨日、家に帰っていないみたいだ」などの会話がよく交わされているそうです。

また、さらに多くの教員で共有した方がよい内容については、学年の朝の打ち合わせで話題にすることもあるそうです。

この情報の共有化により、教育相談システムの生命線として、この中から気になる生徒が浮かび上がってくるシステムになっています。

気になる生徒の情報を教育相談コーディネーターがすくいあげ、定例のコアミーティングで報告をするようにもなっています。

「コア・ミーティング」は、教育相談コーディネーター4名(神奈川県の総合教育センターで実施している「教育相談コーディネーター養成講座」の修了者であり、各学年に配置している。)、養護教諭2名、スクールカウンセラー及び生徒支援グループリーダーにより構成され、スクールカウンセラー来校時(年間30回)に実施し、生徒一人ひとりの状況に応じた支援計画が立てられていきます。

この「コア・ミーティング」においては、学年所属の教育相談コーディネーターが当該学年の生徒の状況について報告し、情報の共有化を図るそうです。事案によっては、管理職が出席するなど、柔軟なメンバー構成で運営をすることで、生徒の支援に大きな効果をもたらしています。

問題行動のある生徒の観察とオン・ザ・フライ・ミーティングに教師が積極的に取り組み、コアミーティングにはほぼ学校中の気になる生徒の情報が集まってきているそうです。

個別指導を検討した生徒は、年間90名以上に上るそうで、全校生徒の7,8人に一人が対象となっているそうです。

教育相談コーディネーターなど一部の教員の取組だけでは、これだけの情報を集めることは不可能であり、田奈高校の教育相談は、全教職員の取り組みによって成り立っているそうです。

田奈高校には様々なニーズを抱えた生徒たちが多く在籍しており、学校全体が生徒を支える視点に立っています。しかしこのような取り組みを強化したことで、多くの角度から生徒情報を共有できるので、発達的な課題や健康的な課題を抱えている生徒に対して、環境問題も含め非常にきめ細やかな支援体制が構築されています。

さらに発達障害の特性のある生徒への自己理解(独特の感じ方や考え方、他者との関わり方を自分らしさの一部として受け止める)を進めて集団生活の中で成長し、その良さを生かし、如何に自分なりの生き方を見つけていくのか、その過程への支援にも繋がっています。

また、田奈高校の保健室は、生徒の自立に向けて、健康・発達の側面から教育的に支援する場としても機能しています。

生徒を取り巻く環境において、日常の様々な課題解決に寄り添いながら支援をするという、生徒一人ひとりににあわせた寄り添い型の支援は見習うべきものです。

私立のとある小学校でも同じように、生徒一人ひとりに全教職員が一丸となって、この田奈高校と同じ仕組みを取り入れています。実は私はその学校での取り組みを体験した親の一人でもありますが、いじめが全くない学校で、学校全体が家族という雰囲気の中での学園生活でした。教師と児童・生徒の距離感もとても良好で、先生方は子供たちの名前をすべて把握しており、田奈高校と同じように先生方が巡回し、毎日の声掛けが常にあり、子供たちに悩みがあればすぐに教師が相談に乗るという体制がすでに整っていました。そのため、学校と親と子供たちのつながりが密接で、子供たち自信もそのような環境で自分に自信を持ち、勉強熱心で学力も高まる学校でした。今でも、学校を卒業しても卒業生たちは結束力が高く、皆で集まり、楽しくお付き合いが続いている状況です。同じような取り組みをしているこの学校でも、成果は上げており、まさに学校全体が成功しています。

寄り添い型の支援を実践しているこの田奈高校は、まさにモデルとなるべき取り組みの一つです。この取り組みは全小中学校・高校と教育全体の指導につながるものであり、この取り組みを実践すれば、学級崩壊や学力低下の防止に一翼を担います。

生徒のライフスキル・自己認識・意思決定・コミュニケーション・目標設定・ストレスマネジメント等の形成や自らの人生を主体的に生きる道筋が与えられるこの支援制度を、足立区そして国全体で取り組みができないか、検討すべき事案の一つだと考えます。