中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー

第5章 総論


5-3 2世、3世問題の取り組みの必要性



中国残留帰国者の地域社会での生活を考える場合、本人のみならず、配偶者や子、孫などの同居家族の問題も併せて考える必要がある。
国や東京都、各地方自治体、帰国者の支援施設等のヒアリングから見えてきたことは、2世3世の就労のみならず、その数さえも把握していないのが現状である。

このことからも、今まで、中国残留帰国者問題の扱いの中で、2世3世の問題については、支援は必要ではあるが、直近の優先課題として扱われていないことがよく分かる。
2世3世の日本語の習得、就労支援や住宅対策など問題は、これからの中国残留帰国者に対する課題の中でも大きな比重を占めていくものと予想される。

これらの課題は、その地域社会で生活しながら解決していく必要がある。
各地方自治体が、財源の問題や他にも優先すべき施策があるにせよ、中国残留帰国者に対して、生活支援と連動した職業相談を行うとともに、公共職業安定所と連携した職業紹介ができるよう、自治体としても2世3世の就労を応援していけるような体制を整える必要がある。
例えば、2世3世の職業紹介として、公共職業安定所が関係企業と連携し、中国残留帰国者の特性に応じた、貿易会社、旅行会社、金融関連会社、ホテル、レストランなど中国語能力を活用できる求人を各地方自治体が開拓していくこともそのひとつである。

また、2世3世を単に支援の対象としてみるのではなく、中国語ができることや中国残留帰国者への理解があるなどの特性を十分に活用することも大切である。
先の介護ヘルパーの例は、これにあたる。
また、2世3世に限らず、中国残留帰国者の中には中国の伝統とも言える太極拳や書道、中国料理などの技術や能力を持ったものもいる。
そのような能力・経験を生かす場を提供し、活用することは、地域社会への浸透という面でも効果が期待できる。