代表質問の内容②【発達障がい特性がある人たちに対する防災対策について】
前回に引き続き、今回は「発達障がい特性がある人たちに対する防災対策について」行った代表質問をご紹介します。今回の代表質問では、発達障がい児・者、発達障がい特性がある人(診断名がつかないグレーゾーンの人たち)に対する支援策の構築に向けた政策提言です。ここでは、多岐に渡る行政部門が区民のライフステージの全てに関わるだけでなく、個人や家族だけでは対応しきれない課題となっている諸問題、障害ともいえず誰にでも起こり得る可能性のあるテーマを取り上げています。
今回の内容は、その中でも知的障害を伴わない発達障がい特性のある人たちに対する特別な対応の必要性についての政策提案です。日本の災害対策は、阪神淡路大震災以後、様々な体制整備が進められてきました。そして一昨年の東日本大震災を経て高齢者や障がい者と言った災害時要援護者に対する対応マニュアルも自治体で整備されています。しかし、今、マスコミでも注目されている知的障害を伴わない発達障がい特性がある人たちに対する配慮が明確にされておらず、環境の変化に弱い当事者たちが避難施設での生活に馴染めず、当事者やその家族が避難した施設内で孤立化した現状がありました。このような人たちには、災害発生時に避難所で発達障がいの事を理解し特別な配慮や支援してくれる避難所の人がいることが最も重要です。知的障害の無い発達障がい特性のある人たちは、コミュニケーションや対人関係の苦手さ、生活上の困難さがあるので、災害時には適切な支援が必要となります。また、発達障がい特性のある人たちは、その障害も程度の差があるので、その人の障害特性に合わせた支援の工夫が必要です。
発達障がい特性がある人たちへの支援は身の安全を確保した先にある避難生活における困難性への対応が最も重要であり、私はその観点から質問・提案をしました。
以下、代表質問の内容と、その答弁です。
*****以下、本会議の議事録の要旨です*****
<長谷川>
先ず、危機管理について質問をいたします。
東日本大震災の経験を生かすため、足立区でも様々な体制整備が現在進められています。しかし、その対応システムにもまだいくつかの課題が残されています。
発達障がい特性(以下、診断名のつかないグレーゾーンの人たちも含める)がある人たちに対して、身の安全を確保した先にある避難生活における困難性への適切な支援が求められます。
知的障害を伴わない発達障がい特性がある人は目に見えない・わかりにくい障害特性の為、支援整備が遅れています。災害発生時に第1次避難所に入ってもその障害特性ゆえに、災害時のような突発的で予測のつかない状況や避難先のような普段とは違った状況では混乱を起こしやすくなります。そのため、その場でパニックを起こし、周りを疲弊させ、トラブルを発生させてしまいます。知的障害のない発達障がい特性がある人は、コミュニケーションなどの対人関係の難しさや、生活上の困難さをもった人たちがいます。
足立区で特別支援クラス(固定級)に在籍している子供の数は小中学校合わせて428人、特別支援学級(通級)に在籍している子ども達は343人です。自閉症以外の子ども達も在籍をしていますが、通常学級(45186人)に在籍している発達障がい傾向の児童・生徒は通常学級に6.5%~20%の割合でおり、約3000人~9000人位の子ども達に特別な配慮が必要であると言えます。青年期・成人期の発達障がい特性がある人たちを含めると、足立区ではその数は数万人に上ります。
第1次避難所の中で、発達障がい特性がある当事者に対する、障害特性に応じた特別な配慮や支援が必要です。
【問】
第1次避難所、第2次避難所問わず、どの避難所においてもその支援が出来る避難所運営スタッフを設置し、育成することが大切です。一定の権限を持った運営スタッフに対する研修会を行い、発達障がいの理解を深め、避難生活の支援の細部に発達障がい特性がある当事者とその家族に対する配慮が行き届く支援体制を、是非、構築して頂きたいと思いますが如何でしょうか。
また、発達障がい特性がある当事者はクールダウンができる部屋が必要です。つまり、物理的に周囲からの刺激が軽減される空間の確保が必要となります。避難所での生活騒音や視覚にたくさんの情報が飛び込んでくると大変不安になり、パニックを起こす要因に繋がります。
【問】
第1次避難所においても、パーテーションを使ったり、別の部屋を用意するなど周りの音があまり聞こえず、余計なものが視覚に入らない空間を確保する取り組みを進めて頂きたいと思いますが、如何でしょうか。
発達障がい特性がある当事者が必要とする配慮です。これらの配慮ができる支援体制を是非、足立区の全ての避難所で行って頂きたいと思います。
<危機管理室長>
私からは、発達障がい特性がある方に対する防災対策についてお答えします。
災害時には、発達障がい特性がある方々が恐怖や不安により精神的に不安定な状態になることが考えられます。まして避難所の生活となれば、ご本人だけでなくご家族もほかの避難者への気遣いなど心理的な負担も大きくなると思われます。こうした中では、発達障がいの特性を理解し、助け合うことが避難生活を送る全員のストレスを軽減することに繋がります。今後、第1次避難所の運営本部長をはじめ、第2次避難所に配置する区職員等を対象とした研修会などの実施や支援体制の構築について、関係所管と調整を進めてまいります。
また、クールダウンが必要になった場合に備え、第1次避難所内に落ち着ける空間を確保することにつきましても調整してまいります。