中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー

第2章 中国・樺太残留帰国者問題


2-3-1 損害賠償請求事件 大阪地裁 2006年7月6日 
(訟務月報52巻5号1307頁・判例タイムズ1202号125頁) 棄却


全国で起こされた裁判のうち、最初に判決が出たのは大阪地裁である。
大阪では2003年に提訴が行われ、1次、2次、3次提訴を含め、144名が原告となった。
第1次提訴のうちの32名に関しては、先行して審理が行われ、2005年7月6日に全国で初めての判決が出ることとなった。
判決は、国の主張をほぼ全面的に認め、原告側にとっては、完全敗訴の内容(請求棄却)であった。
大阪地裁の判決では、国に対して「帰国を希望する孤児らに対して、早期に帰国を実現出来る措置を取るべき責務がある」とした上で、「帰国を希望する残留孤児のために早期帰国を実現させる施策を立案、実行すべき条理上の作為義務を負ったものと認める」とした。

しかし、厚生省(現、厚生労働省)の施策がこの義務に違反しているとは認められないとし、国の早期帰国義務違反を認めなかった。
また、自立支援義務違反については、国の実施してきたさまざまな自立支援施策を「総合的政策判断のもとに自立支援策を立案、実行してきた」と認め、自立支援義務違反はなかったとした。
大阪訴訟は控訴され、舞台は大阪高裁に移り、訴訟が進められていくこととなる。
先行審理により、この判決が出た32人の原告は、大阪高裁に控訴をし、残りの112名は、引き続き、大阪地裁で審理が進むこととなるが、国の新制度のスタートを目前に控えた2008年3月11日に、大阪地裁、大阪高裁ともに、原告側は訴訟の取り下げを行った。