中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー
第2章 中国・樺太残留帰国者問題
2-3-8 国家賠償請求事件 札幌地裁 2007年6月15日
(TKC法律情報) 棄却
高知地裁の判決は、神戸地裁判決以降、2件目となる国の義務違反が認められるというものであったが、同日に出された札幌地裁の判決は以下のような判決となった。
早期帰国実現義務については、「満州移民政策やその後民間人保護策を講じなかったことなどを含めた一連の国の施策は、高度に政治的な判断に基づく行為で司法判断が及ばない」などと述べた上で、日中国交正常化前から国は様々な形で交渉や調査を進めたことを挙げ、国の義務違反は認められなかった。
また、自立支援義務についても、孤児の自立支援については、帰国後に日本語研修を実施するなどしており、「最良ではなくとも不合理とはいえない」として、義務違反についても認めなかった。
その後、札幌高裁に控訴したが、新制度の成立を受けて訴えを取り下げ、裁判は終結した。