中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー

第4章 中国残留帰国者問題の課題と対策


4-2 地方自治体による格差



(1)問題点
中国残留帰国者問題を考えるにあたって、大きな課題となるのは「地方自治体による格差」の問題である。
各地に定住した帰国者の数は、今回、支援制度の中心的な役割を果たすことになる市区町村において、大きな差がある。
中国残留帰国者やその家族は、全国で800の区市町村に分散して定着しているといわれている。

東京23区だけを見ても、新制度の支援の対象となる帰国者の数は、千代田区には1世帯、2人しかいないのに対し、足立区では133世帯、218人にものぼる。
当然、帰国者が多い自治体は、その支援体制に力をいれるが、帰国者の少ない自治体においては、その少数の人々のために、行政がとこまで予算と人員を割くかが大きな課題となってくる。

現在、東京都においては、各区市町村との間に「支援連絡会」を設置し、それぞれの区市町村において実施できない事業については、東京都が補完する体制をとっている。


(2)対策
中国残留帰国者の定着地については、およそ4割が東京に住んでいるとも言われ、地域間で大きな差があるのが現状である。

この対策として、厚生労働省は、全国一律の基準で事業を進めることを求めるのでなく、その地域に応じた施策を展開するよう都道府県や市区町村と協議を行うべきであると考える。

具体的には、いわゆる選択と集中の考え方を応用し、中国残留帰国者が多く定住する自治体には、あらかじめ特別な予算付けを行うなどの対策が考えられる。

また、中国残留帰国者が少ない自治体においては、東京都の例のように、都道府県がその事業の補完をすることもひとつの方法だが、それでは、きめの細かい支援が行えない可能性も出てくる。
そこで、定着する帰国者が少ない自治体においては、事業を都道府県が補完するのでなく、近隣の区市町村が補完するような体制作りを提案したい。
また、帰国者の数が少ない区市町村がいくつか集まって、ひとつの共同自治体として、支援事業を行うことも選択肢のひとつである。

自治体を超えての共同事業というのは、いろいろと課題があるのも想像できるが、予算や人員の配分など、厚生労働省や都道府県がリーダーシップを発揮することにより可能になると考えられる。