中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー
第4章 中国残留帰国者問題の課題と対策
4-3 中国残留帰国者の多様化・高齢化
(1)問題点
戦後、60年以上たった今日、中国残留邦人の高齢化が進んでいる。
そのため、日本語の習得や生活習慣への順応などが、難しくなるだけでなく、センターなどで支援事業(日本語教室)などを行っても、それに通うことも困難になる。
たとえば、日本に帰国後、最初に入る施設、中国帰国者定着促進センターでは、日本語教材の独自のカリキュラムが編成されている。
国の方針で入所期間は6か月と定められている。
子供や若い世代にとっては、この6カ月という期間は、むしろ長いとみる面もある。
言葉や生活習慣の習得や理解が早く、またより上達するためには、早く、実社会に出て、生活をした方がよいという考え方がある。
一方、高齢の帰国者にとっては、6か月で日本語や生活習慣を習得するのは、決して易しくない。
しかし、帰国者の多くは、家族単位で定着促進センターに入所するため、どちらかに合わせて入所期間を長くしたり、短くしたりすることも現実的でない。
おそらく当初は、中国残留帰国者問題が、これほど長引くと予想していなかったため、2世、3世なども含めた、幅広い年齢層に十分に対応しきれていないのではないだろうか。
これらの事情を鑑み、施設を出た後も、継続して学習する環境をつくる取り組みとして、現在、通信教育という形で全国各地に定着している帰国者とその家族がいつでもどこでも日本語学習ができる機会が得られるようにする試みが始まっている。
また、中国残留帰国者の高齢化による医療や介護の問題も切実である。
(2)対策
帰国者の高齢化問題は、深刻である。
高齢で帰国した者は、日本語の習得や生活習慣への順応と言う点においても、
困難が生じる。
そのため、地域での語学学習などは、純粋に日本語の学習というよりも、当人のケアや周囲の人とのコミュニケーションなどを目的し、進めるべきである。
日本語の習得を急がせたり、目的がそれだけになってしまうと、当人にとってもプレッシャーとなり、次第に、そのような場に参加しなくなる恐れがある。
また、研修会場が居住地から遠く離れた地域であると、高齢者にとっては、移動だけでも大きな問題となってくる。
市区町村単位、あるいはもっときめ細かく校区や町会、自治会単位での集まれる場を設けることが必要である。
さらに、高齢化に伴う医療・介護の問題は最も深刻な問題と言える。
実際、支援交流センターでは、医療語学の授業がもっとも人気が高いという話しだった。
まずは、高齢の帰国者の健康増進を図ることが大前提であるが、医療・介護の現場で不自由を感じないためにも、中国語を理解できる相談員や通訳者の派遣が必要であると考えられる。
しかし、医療用語や体の不調の微妙は表現などを理解し、伝えるのは、ただ単に中国語を話せればよいというものでもない。
これらの通訳においては、2世、3世にその役割を担ってもらうことは、彼らにも活動の場を提供すると点においても意味がある。
また、通訳など中国残留帰国者を支援する人を支援し、育てていく早急な体制づくりが必要であると考える。