中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー
第4章 中国残留帰国者問題の課題と対策
4-6 2世、3世の問題
(1)問題点
中国残留帰国者の多くは帰国をあきらめ、または、日本に帰国する希望を持ちながらも、長期間にわたる中国での生活から、現地で家族を持った者が多い。
そのため、現在、中国残留帰国者の帰国の際には、その配偶者や未成年の子供なども、国費での帰国が認められている。
また、帰国者の中には、国費での帰国が認められなかった家族について、私費での呼び寄せを行っているものも多く、その数は、正確には把握されていない。
中国残留帰国者の1世は高齢化が進み、その子である2世でも40代50代、その孫である3世も上は20代から下は小学生までと、いわゆる就学年齢、就労年齢であることが多い。
そのため、残留帰国者と同伴で帰国した者も含め、2世、3世の就学問題、就労問題は大きな問題となっている。
しかし、前述したように2世、3世については、その就労状況などはおろか、2003年に厚生労働省が行った調査においても、国費での帰国以外の帰国者については、その数さえ、正確に把握できていないのが現状である。
2世、3世への支援体制が整っていない現状では、必ずしも良好な生活環境を築くことができず、一部の2世、3世が犯罪集団に属し、社会的な犯罪を起こす事態も生じている。
(2)対策
現状で、2世、3世の状況を把握するのは大変難しく、厚生労働省、東京都、区市町村などの行政機関や、各センターにおいても、その実態は把握していない。
また反対に、一般の国民と変わらない生活を送ろうと考えている2世、3世に対して、追跡調査のようなことをすることが望ましいかという問題もある。
中国残留帰国者の2世、3世の中には、中国固有の楽器や太極拳などの技能を持つものも多くいる。
また、日本語と中国語を両方使え、2つの国の文化を理解していることも大きな武器となる。
行政としては、特技や能力を生かした仕事の斡旋を行ったり、そのような特技などを披露できる場の設けることも必要である。
本来なら、2世、3世の活用こそ、この中国残留帰国者問題を解決する鍵となると言える。