中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー

第5章 総論


5-1 中国残留帰国者に対する理解深める取り組みの必要性



中国残留帰国者の問題がこれほどまで長期化したのは、国の体制はもちろんのこと、一般国民の中国残留帰国者に対する理解不足もその一因に挙げられる。

中国残留帰国者が帰国までの間に経験した苦労や、帰国後祖国に定着するために直面した困難について、一般の国民は理解と共感を持ち、地域社会に温かく迎え入れているとは限らない現状がある。
このことが、中国残留帰国者の心を傷つけ、この問題をさらに深刻化していると考えられる。我々、一人ひとりが中国残留帰国者に理解を持ち、地域に暮らす住民として温かく接することが重要であるが、現実は本論文の示す通り、さまざまな問題を抱えている。
今後、新しい支援策を進めるにあたっても、中国残留帰国者当事者への支援と併せて、一般国民や地域社会への普及・啓発活動を積極的に行い、理解を深める努力をしていくことが求められる。

一方、中国残留帰国者が既に高齢化していることを踏まえると、支援制度の柱の一つでもある「日本語学習支援」についても、不十分の誹りを免れず、検討の余地がある。
すでに高齢に達した帰国者たちは、語学の習得速度も遅く、また同伴で帰国した高齢の中国人配偶者や2世の中には、日本語や生活習慣の習得意欲そのものが高くない者も多数いる。
日本語や生活習慣の習得を単に「学習」と位置づけるのではなく、中国残留帰国者らの交流の場とした「生涯学習」ととらえ、社会との接点を維持することを目的のひとつとしていく必要もあるだろう。