中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー

第5章 総論


5-2 帰国者の高齢化に伴う介護支援の取り組みの必要性



中国残留帰国者の高齢化に伴い、介護の問題も生じてくる。
現在、終戦時に0歳であった中国残留孤児でさえ、すでに年齢は60歳を超えている。
日本語が十分に話せず、日本の生活習慣に馴染めない中国残留帰国者にとっては、一般の高齢者福祉施設に入所することは難しく、介護サービスなどを受けようにも、言葉の壁が立ちはだかる。

1998年頃、中国残留帰国者の2世、3世の中には、ヘルパーの国家資格を習得したものも多くいた。
しかし、中国残留帰国者のみを介護の対象としていては、収入が維持できないが、介護の対象を一般の日本人とすると、ここでも言葉の壁が立ちはだかるというジレンマに陥った。
その結果、資格はとったものの仕事がないのが当時の現状であった。

しかし、残留孤児の世代、2世の世代が要介護の年齢に達しようとしている現在、中国語を話し、中国残留帰国者に理解のある2世、3世の世代が同じ中国残留帰国者の介護の場での活躍することは、その能力の活用という点からも非常に有効であると考えられる。
このことは同時に、中国残留帰国者問題の課題のひとつである「2世、3世」の就労問題の解決の一翼を担うことも期待される。

また、中国残留帰国者が優先的に入所できる高齢者福祉施設を設定することにより、帰国者の老後が安心して暮らせる体制作りも望まれる。