中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー

第5章 総論


5-4 地方自治体、地域社会の取り組みの必要性



新しい支援制度では、支援事業の主体が、国や都道府県から、区市町村へと移行した。これにより、きめの細かい支援体制が期待されている。
しかし、同時にきめの細かさはよいが、それぞれの自治体が独自の判断でバラバラにやっていては、無駄が多い。それぞれの段階で、情報と問題などを共有し、ノウハウを蓄積していくことが重要である。

現在、中国残留帰国者は全国で約800の区市町村に分散して生活しているといわれている。
区市町村の中には、何百人もの中国残留帰国者が生活する自治体もあれば、一人もいない自治体もあるため、一律の政策や対応は難しい。
また、区市町村の財政規模などを考慮に入れると、単独では行うことができる施策もおのずから限られてくる。

そのため、各地域の事情を考慮に入れた政策を進めていくことはもちろんのこと、近隣自治体との協力をすることにより、限りある予算の中で行っているお互いの支援政策を補完しあうことも有効な方法であると考える。

また、地方自治体の支援事業を補完する手段として、上に挙げた近隣自治体との協力の他に、地域に根付いているNPOやボランティア団体、地域コミュニティーとの協力体制も、中国残留帰国者問題に継続的に取り組んでいくためには、必要となってくる。