中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー
第2章 中国・樺太残留帰国者問題
2-4-1 2008年3月までの主な政策、支援制度
(1)国(厚生省→厚生労働省)による支援政策について
① 国(厚生省→厚生労働省)による支援政策の歴史
中国残留邦人への国の支援等の流れは、以下のとおりである。
1945年 | 8月 | 終戦 |
1946年 | 5月 | 中国からの集団引き揚げ開始 |
1949年 | 10月 | 集団引き揚げ、一時中断 |
1952年 | 2月 | 帰国に要する船運賃を国庫負担とする |
1953年 | 2月 | 引き揚げ者に対し、帰還手当を支給 (1987年からは、自立支度金に改称) |
8月 | 未帰還者留守家族等援護法 | |
1958年 | 7月 | 中国からの集団引き揚げ終了 |
1959年 | 3月 | 未帰還者に関する特別措置法 公布 |
1972年 | 9月 | 日中国交正常化 |
1980年 | 11月 | 中国残留孤児問題について第1回関係各省庁連絡会議 開催 (以降、2004年までに、33回開催) |
1982年 | 3月 | 中国残留孤児問題懇談会 発足 |
4月 | (財)中国残留孤児援護基金 設立 | |
1984年 | 2月 | 中国残留孤児着センター開所(所沢市) (1994年 「中国帰国者定着センター」に改称) |
1985年 | 3月 | 身元引受人制度の創設。身元未判明孤児の永住帰国受入れへ |
1987年 | 大阪、北海道、福島、福岡、愛知に定着センター開所 | |
1988年 | 全国15箇所に中国帰国者自立研修センター 開所 | |
1989年 | 7月 | 身元判明孤児に対する特別身元引受人制度の創設 |
1991年 | 4月 | 北海道の定着センター閉所 (以降、2008年5月現在、所沢の一ヶ所) |
1993年 | 12月 | 永住帰国を希望する中国残留邦人等の受け入れを決定 |
1994年 | 10月 | 中国残留邦人自立支援法 施行 |
11月 | 中国残留邦人等に対する国民年金の特例措置 | |
1995年 | 2月 | 身元引受人制度の一本化 |
1996年 | 4月 | 中国残留邦人等に係る新たな国民年金の特例措置 施行 |
1998年 | 10月 | 樺太残留邦人が所沢の定着センターに入所 |
2001年 | 11月 | 中国帰国者支援・交流センター 東京と大阪で開所 (以降、2008年11月現在、全国で7か所となる) |
2003年 | 11月 | 中国帰国者生活実態調査の実施 |
2007年 | 11月 | 中国残留帰国者自立支援法 改正 (2008年 4月 支援給付、支援相談員の配置など、新制度の開始) |
② 国(厚生省→厚生労働省)の支援政策
厚生労働省は、中国残留邦人等に対する支援政策として、この間、以下の取り組みを進めてきた。
1)一時帰国援護
日本への永住帰国は望まないが、墓参や親族訪問等を希望する場合は、毎年一時帰国をすることができる。
また、在日親族による受入が困難な場合や、身元未判明の孤児の場合は、(財)中国残留孤児援護基金に委託し実施している集団一時帰国に参加し、毎年一時帰国ができる。
2)永住帰国援護
日本への永住を希望する場合は、永住帰国をすることができる。
3)定着・自立援護
中国残留邦人は長年中国などの異文化の中で生活してきているため、日本に永住帰国し、定着自立するに当たっては、言葉、生活習慣、就労等の面で様々な困難に直面することとなる。
1.中国帰国者定着促進センター(以下、定着促進センター)に入所(帰国直後の6ケ月、基礎的な日本語や生活習慣等の研修を行う。)
→肉親または身元引受人のもとに定着(公営住宅等に入居。)
2.中国帰国者自立研修センター(以下、自立研修センター)へ通所(日本語、就労等の研修を8ヶ月行う。)
3.中国帰国者支援・交流センター(以下、支援・交流センター)の活用(帰国後4年目以後も継続して日本語学習や相談等の支援を行う。なお、定着促進センターに入所している者を除き、希望者はいつでも利用可能。)
4.自立指導員の派遣(日常生活上の相談及び自立に向けての各種指導を行う。)
5.自立支援通訳、巡回健康相談の実施
(2)地方自治体の取り組み
国の施策の中で、中国帰国者自立研修センター、自立指導員や通訳派遣事業は、国から委託を受けた各都道府県が実施主体となり行ってきた。
ここでは、東京都の取り組みについてまとめる。
東京都では、国の委託を受け、「福祉保険局 福祉部生活支援課 中国帰国者対策係」が中心となり、以下のような中国残留帰国者の支援事業を行ってきた。
1)自立支援支度金の支給
大人(18歳以上)159,400円、小人(18歳未満)79,700円
※この他に、東京都の単独事業として、「帰還祝金の支給」がある。
2)身元引受人による相談・助言(3年間)
3)日本語指導事業(帰国後、3年未満)
4)自立指導員による指導(原則3年間)
※それ以降は、東京都の単独事業として、「生活相談員による相談・指導」として、引き続き行う。
5)通訳派遣事業
6)健康相談事業
具体的には、中国帰国者自立研修センター等と協力し、日本語の習得をはじめ、相談員・指導員による生活の指導・相談を行ってきた。
東京都における中国残留帰国者対策の歴史については、本論文末尾の参考資料[1]に詳しく記述されている。