第13回マニフェスト大賞 優秀賞候補ノミネートにあたって

☆第13回マニフェスト大賞
優秀賞候補ノミネート(優秀賞候補)にあたって

議員の妊娠・出産・育児等と働き方の

両立に関する支援制度の確立に向けて

 区議会議員3期目である2016年9月に第3子を出産、現在(2018年)、第4子を妊娠、9月に出産予定です。区議会議員として12年務めてきました。1期目当選時、第1子は小学4年生、第2子は小学1年生でした。
 子育てと議会活動の両立の真っただ中で経験した、女性であるがゆえに受けた女性軽視、男女共同参画に反する言動等を含めた職場内(2017年12月に会派解散し、現在は無会派)のパワーハラスメント、モラルハラスメント、マタニティハラスメントに対し、私は妊娠・出産・育児等と議会活動の両立に関する支援制度の確立を強く求めてきました。
 1期目当選後、同じ会派の議員から壮絶なパワーハラスメントを受け、所属政党・同会派に相談、要望書を提出しました。
※添付資料提出…
2007年10月22日 民主党足立区議団に対する意見書
2009年11月25日 ハラスメント防止規定を求める意見書(案)
 そして2018年1月には、政治倫理検討委員会開催のお願いを区議会議長に提出をしました。
 勇気も持って当事者の声を明らかにし、ハラスメントを断ち切る意思を示すことが必要です。女性として、母として、社会を創る議員として、誰もが安心して能力を発揮できる職場環境、社会を創ることが重要だと考えます。全国の女性議員達からは、議会内で多くのハラスメントの実態があることを超党派で結成した「出産議員ネットワーク」からも報告がされています(2017年12月発足。私もそのメンバーです)。
 今回、私が足立区議会に訴えたことで、既存の足立区議会 議会制度のあり方検討会の下に「議会活動と育児等の両立に関する部会」が新設されました。そこでまず、新設された部会に、妊娠・出産、育児等を行っていくうえで議員として活動していく際の課題について、事務局に要望書を提出しました。
※添付資料提出…議会活動と育児等の両立に関する部会に要望書を提出

 この部会は2018年3月に発足し、7回開催されました。そして、私自身が出産議員という当事者の立場で、この部会のメンバーになりました。
※添付資料提出…
議会活動と育児等の両立に関する部会第1回
議会活動と育児等:第2回3月22日の部会
議会活動と育児等:第3回4月16日の部会
議会活動と育児等:第4回5月11日の部会
議会活動と育児等:第5回5月25日の部会
議会活動と育児等:第6回6月12日の部会
議会活動と育児等:第7回7月3日の部会

 私自身が9月出産ということもあり出産議員制度が適用されるよう、議長に求めました。
このことで超党派の幹事長会に諮られ、支援制度の施行時期を配慮して頂きました。
 2018年9月1日付で足立区議会「議員の妊娠・出産・育児等と議会活動の両立に関する支援制度」が施行されることとなりました。
※添付資料提出…
議会制度のあり方検討会 答申書

 7回開催された部会の中では、「議員、傍聴者を含めた託児室の設置」「本会議、委員会等へ出席する際の保育など」「視察時の子どもの同伴及び同行者の宿泊など」「本会議、委員会などの表決権及び文書質問について」「会議時間の見直しについて」「着席での質問」「ハラスメントの周知・相談体制に関すること」「ハラスメント相談窓口の開設」「周囲からの理解不足の課題」「保育所入所にあたっての指数の在り方」について議論が交わされました。

 「表決権」については意見がまとまらなかったものの、文書質問については、質問主(趣)意書に置き換えて足立区議会 議会制度の在り方検討会に付託され、今期中に結論を出す方向となりました。
 また、「議員、傍聴者を含めた託児室の設置」に関しては新たに予算を付け、議員厚生室を活用し、音声聴取ができるようになりました。「視察時の子どもの同伴及び同行者の宿泊など」「着席での質問」「ハラスメントの周知・相談体制に関すること」「周囲からの理解不足の課題」「保育所入所にあたっての指数の在り方」について足立区議会 議会制度の在り方検討会でこの取り組みが行われることが7月30日付で決定し、9月1日施行、全国初の「議員の妊娠・出産・育児等と議会活動の両立に関する支援制度の確立」が先進的に行われました。

 すでに2018年6月から、足立区議会では妊娠期における本会議場等の議席の配慮がなされています。私が妊娠6か月頃から本会議場での議席が座りにくくなった為、議長に申し出て本会議場最前列の端に議席を変更してもらいました。足立区議会定例会初日に本会議場で議席の変更が諮られ、認められました。今回、足立区議会で私が先例を作ったことで、今後、妊娠期の女性議員に対する議席の配慮が行われることとなります。
 また、8月24日に足立区議会では「ハラスメント研修会」が全区議会議員対象に行われました(研修時間は2時間30分)。
 担当講師:メンタルサポート労務代表・社会保険労務士・ハラスメント防止コンサルタント
 李怜香 「ハラスメントの現状と対策」
※マタニティハラスメント・モラルハラスメント・セクシャルハラスメントの研修会を足立区議会で実施したことは、東京23区の区議会でも初の試みとなります。
※参考資料提出…
調査集計表【20180322部会資料:足立区議会事務局2018.3.22部会調査
女性議員による議会改革の発案について他区の状況:足立区議会事務局2018.1調査


 各派幹事長会や広報委員会で諮られ、9月12日にマスコミに向けてプレスリリースがされ、産経新聞と日本経済新聞で「議員の妊娠・出産・育児等と議会活動の両立に関する支援制度の確立」についての記事が掲載されました。 また、社会の意識向上を発展させる為、区民に向けた周知・啓発として足立区議会のホームページに「足立区議会は育児と議会活動の両立を支援します」というタイトルで、その詳細が公表されました。また、11月25日区民向けに足立区議会で採択された内容の周知・啓発として、「区議会だより」で全戸配布されました。





【1】議員の妊娠・出産・育児等と議会活動の両立に関する支援制度の確立に向けた取り組みの必要性  2012年10月26日、第127回列国議会同盟(IPU 178か国 欧州議会等12機関が準加盟)において、「ジェンダーに配慮した議会のための行動計画」(Plan of Action for Gender-sensitive Parliaments)が全会一致により採択されました。

<行動計画の概要>
☆定義
「その組織構造、運営、方式、業務において男女双方のニーズと利益にかなう議会。
ジェンダーに配慮した議会は、女性の完全参加を妨げる障壁を取り除き、社会全般の手本となる事例または模範を示す。」

☆7つの行動分野
1.女性議員数の引き上げと参加の平等の実現
2.ジェンダー平等のための法律および政策の強化
3.あらゆる議会業務におけるジェンダー平等の主流化
4.ジェンダーに配慮したインフラ及び議会文化の整備または改善
5.両性の議員全員によるジェンダー平等に対する責任の共有
6.政党がジェンダー平等の推進者となることを推奨
7.議会スタッフにおけるジェンダーへの配慮とジェンダー平等の促進


 各国はジェンダー平等を含む女性の人権を推進し、尊重し、保護しなければなりません。
この目標を擁護する上で、議会は適した立場にあります。議会は社会を反映するものでもあり、有権者の変化も反映しなければなりません。
 ジェンダーに配慮した議会とは、その構成、組織構造、運営、方式及び業務において、男女双方のニーズおよび利益にかなう議会であり、女性の完全な参加を妨げる障壁を取り除き、社会全般の手本となる事例または模範を示すものです。

 4.ジェンダーに配慮したインフラ及び議会文化の整備または改善とは
 議会は他の職場と同じように、あるいはそれ自体が家族にやさしい政策及びインフラの提供、差別とハラスメントの防止に関連した政策、議会の資源および設備の公平な配分に関する政策の実施を通じてジェンダー配慮の原則を支持することにより、模範として社会の役に立つべき。

☆仕事と家庭の両立支援
● 審議時間を変更(審議開始時刻を早める、遅い時間の議決を避ける)する。
● 議院内に託児所やファミリールームを設け、開会中も議員が家族と過ごせる時間を増やす。
● 授乳中の議員が審議に出席しなくていいように、代理投票やペアリング制度を利用できるようにする。

☆差別とハラスメントの無い職場環境の促進
● 人の呼び方や言葉遣い、慣習、規則についてジェンダーに基づいた分析を行う。
● 全議員を対象にしたジェンダーに関する意識向上の研修セミナーを実施する。

☆公平な資源と設備の提供
● 全議員向けに提供されている設備のジェンダー評価を行う。
● 議院手当や議員旅費の支給は、公平かつ透明な方法で行われるようにする。

 参加各国には、可能な限りその周知を図り、国レベルでこれを実施することを強く要請されています。しかし、日本では議会への周知や広報もほとんどなく、その取り組みもなされていない状況です。

【2】社会における女性議員の妊娠・出産・育児等と議会活動の現状  「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告書」
(平成29年度内閣府)によると地方議会における現状として、女性議員の比率は低い状況です。
都道府県議会  9.8%
市区議会        14.8%
町村議会          9.8%
 また、女性議員の年齢構成は50歳以上が7割を超えています。

☆地方議会において女性議員の増加を阻む課題が3つ
内閣府による初の実態調査…全国の女性地方議員約4000名対象
(平成28年12月31日時点 回収率39.6%)
1.政治は男性のものという意識(固定的役割分担意識)がある
アンケートで「女性議員が少ない原因として考えられる理由」を質問
→政治は男性が行うものという固定的な考えが強いとの回答が59.1%
女性議員比率が高い議会に所属する議員ほど、「男性議員の理解やサポートがない」ことを課題としない傾向がある。
2.議員活動と家庭生活の両立環境が整備されていない
アンケートで、育児に伴う休暇や休業制度、託児所や授乳室の有無を質問
→休暇や休業では6割以上が規定なしと回答。託児所や授乳室は9割以上がなしと回答
アンケートで、40歳以下で未就学児を抱える女性議員の回答を抽出
→議員活動と育児の両立が課題であるとの回答が78.8%
3.経済的な負担が大きい
アンケートで、選挙資金における自己資金の割合を質問
→自己資金の割合は平均で6割程度。
→女性議員比率が高い議会に所属する議員ほど、選挙費用の自己資金の割合が低い傾向にある。

<全国議会の出産議員に関する事例>…前出「出産議員ネットワーク」
全国議会事務局調査2017年12月(全国地方議会47都道府県、814市区、東京都内13町村 874団体)
1.北海道稚内市
● 代表者会議にて、議会運営の申し合わせとして、労働基準法と同様の最大産前6週間出産後8週間の欠席を認めると共に、会議出席時の服装について身体に負担のかからない服装を可とすることとした。
2.埼玉県狭山市
● 出産後に保育所に入所するにあたって就労証明が必要となり、議長名で発行した。(他の自治体では、会期外の保育を断られたケースもあった)
● 本会議の議案採決時、賛成の意思表示を該当議員のみ起立ではなく挙手で可とした。
3.千葉県袖ケ浦市
● 議会運営委員会議会広報の議決結果欄において、出産などの欠席理由を本人の希望により掲載可能となった。
4.愛知県尾張旭市
● 議会広報紙「市議会だより」の欠席理由の表記を「欠席」から「産休」の表記となった。
5.愛知県半田市
● 産休期間中の会議の欠席届の提出については、妊娠届出書または医師の証明書等の写しの提出を持って替えることとした。
6.福岡県福岡市
● 女性議員の妊娠を契機に委員会室の禁煙を申し合わせた。
7.熊本県熊本市
● 出産直前の定例会にて一般質問を行った際に、演壇で立ったまま質問を行うことが困難との申し出があったため、演壇に椅子を準備し着座にて質問を行うことを認めた。
● 委員会視察の際に、家族動向について依頼があり、委員長はじめ全委員の同意のもと宿泊先での家族同行を認めた。
1から7の自治体から出た、出産議員の課題については以下の通り。
● 議会広報紙「市議会だより」で欠席理由の表記について。
● 乳児連れの登庁について。
● 議場の傍聴スペース内における親子室の設置や会議中の託児サービス導入についてなど。
● 産前・産後休暇の議会欠席中の質問機会の確保。
● 会議の都度、欠席届の提出が必要であったため、取り扱いについて議会運営委員会において協議を行った。

【3】足立区議会2018年9月1日施行、全国初の「議員の妊娠・出産・育児等と議会活動の両立に関する支援制度の確立」の詳細について 足立区議会で新設された 「議会活動と育児等の両立に関する部会」の決定事項 2018年9月1日施行
1.議会活動と妊娠・出産・育児等について
(1)施設等の設置・改善に関することについて
(i)議員、傍聴者を含めた託児室の設置
→議員厚生室を活用することとし、本会議はケーブルテレビによる視聴、委員会は音声聴取により会議の様子が把握できるようにすること。なお、委員会の音声聴取の手法については、有線ケーブルテレビによる方法や市販のワイヤレススピーカー等、技術面及び費用を検討し導入する。
(ii)本会議、委員会等へ出席する際の保育等について
→本会議及び委員会へ出席する際のこどもの保育については議員厚生室を活用し、授乳や搾乳を行えるようにすること。また、全員協議会等、費用弁償が発生する会議についても同様とすること。
 議員研修会や議員連盟など、費用弁償が発生しない会議については、子どもを同伴しての出席を可能とすること。なお、同伴は、原則1歳未満までの子どもとするが、病気その他、特別な理由が生じた場合には1歳を超えた子どもの同伴を可能とすること。
(iii)視察時の子どもの同伴及び同行者の宿泊等について
→視察先自治体での説明時については子どもの同伴は認められない。自費でベビーシッターを確保し、子ども・ベビーシッターの宿泊・交通費等も自費で賄う等の対応を取れば、子どもを一緒に連れての移動や宿泊等は可能とすること。


(2)本会議・委員会等の運営に関することについて
(i)出産、育児を理由に欠席した場合の表決権及び本会議、委員会等の文書質問について
→表決権及び本会議、委員会等の文書質問については、意見がまとまらなかった。
なお、文書質問の検討の中で出た質問主(趣)意書については、幹事長会や議会制度のあり方検討会などで検討してはどうかという意見が出された。その後、議会制度のあり方検討会で今期中に結論を出すということで、質問主(趣)意書について検討されることとなった。
(ii)会議時間(開会・閉会時間)の見直しについて
→現状のままとすること。(現状、足立区議会は、早くても9時30分開始。遅くとも18時30分には終了するため。)
(iii)着席での質問について
→本会議での質問については、登壇時に着席しての質問を認めることとすること。
また、再質問がある場合には自席で着席しての質問を認めることとすること。
 委員会等での質問については、自席で着席しての質問を認めることとすること。


(3)ハラスメントの周知・相談体制に関することについて
(i)出産議員がマタニティハラスメント・モラルハラスメントを受けないために研修を行うことについて →議員としての品格・良識を高めるため、マタニティハラスメント・モラルハラスメントに限らずハラスメント全般についての研修が必要であり、議員全員がハラスメントに対して十分に理解しなければならないと考えるため、議員の申し出等、研修に必要が生じた場合には、適宜研修を実施すべきである。
(ii)ハラスメント相談窓口の開設について
→意見がまとまらなかった。
なお、既存の区の相談窓口を活用する意見がある一方、議員独自の相談窓口については、検討の中に出た「出産議員ネットワーク」の相談窓口を活用することも一つの案であると考える。
(iii)周囲から理解不足の課題について
→議員厚生室の託児・授乳スペースとしての活用、乳児の視察動向、研修の実施等、区議会が取り組んでいることを区議会だより、区議会ホームページ等で周知することにより、区議会が議員活動と育児等を両立できる環境づくりに努めていることをアピールし、区民の理解を高めていくこととすること。


(4)保育所等入所にあたっての指数の在り方について
→保育所入所にあたっての勤務証明書については、会派所属議員は会派の代表者、無会派議員は議長が発行すること。

【4】今後の取り組み  足立区議会では私が議長宛に「政治倫理検討委員会開催のお願い」を要望したことから、新しい部会が設立されました。計7回の部会での議論により、この度、全国初の「議員の妊娠・出産・育児等と議会活動の両立に関する支援制度の確立」が9月1日に足立区議会で施行されます。今後も足立区議会では、この支援制度を検証し、さらなる制度の拡充を図っていきます。 

 2012年、列国議会同盟(IPU 178か国 欧州議会等12機関が準加盟)においては、「ジェンダーに配慮した議会のための行動計画」に基づく方針が採択されています。このことからも、日本国としても、議会が襟を正す姿勢を区民に示しながら、全国的に議員が妊娠・出産・育児等と議会活動の両立を行うにあたっての支援制度が乏しい現状を打開させ、早急に全国的な自治体間での議会会改革を進めていくことが求められます。
 その為にも、先ずは足立区議会が率先して先進的な取り組みを行い、全国のお手本となる先例を築き、全国自治体に波及させていきたいと思います。

 今後、全国都道府県議会議長会・全国市議会議長会(全国814市・区(791市、23区)の議会の議長をもって組織)・全国町村議会議長会(管下町村議会議長で構成する都道府県町村議会議長会をもって組織)の議会3団体にも働きかけ、議会会議規則に、「人権侵害・差別的言動をしてはならない」旨の項目を追加することや、国においても同様な働きかけを行い、所属政党等の自浄能力の確立に努め、あらゆる形態の差別や性的嫌がらせを含むハラスメントのない環境で仕事ができるよう、行動規範を定めた国際基準である「ジェンダーに配慮した議会」への認識を深めるための取り組みを積極的に展開していきたいと思います。

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