中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー
第2章 中国・樺太残留帰国者問題
2-3 中国残留邦人等が帰国・入国する際の日本政府の対応
この節では、前節で少し述べた、全国で提訴された中国残留帰国者による国家賠償請求訴訟について検討する。(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)
中国残留帰国者は、国に責任を認めて欲しい、辛い現状を変えてほしいと訴え続けた。また、請願や署名活動なども行ったが、国は具体的な支援策を示さなかった。
そこで、2002年、中国残留帰国者は1人3300万円の損害賠償を求めて、東京地裁に提訴を行った。
さらに、東京での提訴を皮切りに最終的には全国15箇所(札幌、宮城、山形、東京、長野、名古屋、大阪、京都、神戸、岡山、広島、徳島、高知、福岡、鹿児島)で、合計2200名以上の帰国者たちによる提訴が行われた。
これは、全国にいる中国残留帰国者の90%近い人数にのぼる。
中国残留帰国者裁判の判決を見る上で、国に対して「早期帰国実現義務(帰国が実現するよう可能な限り手段を尽くすこと)違反」と「自立支援義務(帰国後自立して生活を営めるよう、手段を尽くすこと)違反」があったかどうかの判断が、大きなポイントとされた。
各裁判について、上記のポイントにも注視しながら、一連の中国残留帰国者裁判の流れを見ていきたい。