中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー
第2章 中国・樺太残留帰国者問題
2-3-5 国家賠償請求事件 名古屋地裁 2007年3月29日
(TKC法律情報) 棄却
名古屋訴訟の判決では、「国家が自国民保護のため措置を講じる責務を負うことは当然」として、明確に国の早期帰国実現義務を認めた。
しかし、「政府が未帰還者の調査究明・帰還促進義務を放棄したとまではいえない」、日中国交正常化後も政府の施策について、「著しく不合理であったとはいえない」として、義務違反を否定した。
自立支援義務についても、国の法的な義務があることは認めた。しかし、国が行った日本語教室などの生活支援施策について、
①結果が不十分なものにとどまった
②そのことが、連鎖的に就労率の低迷や生活保護需給率の高率化などの一因をなしている
点を否定できないとしながらも、「著しく不合理なものであったとはいえない」として、自立支援義務違反は否定している。
その後、名古屋高裁に控訴したが、新制度の成立を受けて訴えを取り下げ、裁判は終結した。