中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー

第2章 中国・樺太残留帰国者問題


2-3-6 国家賠償請求事件 広島地裁 2007年4月25日
(TKC法律情報) 棄却


相次いで、原告敗訴の裁判が続く中、広島地裁で出された判決も原告にとっては、厳しいものとなる。

広島地裁の判決では、中国残留帰国者問題におけるいわゆる「国の先行行為」を認めた。
しかし、早期帰国実現義務については、「日中国交正常化により、中国側の理解が飛躍的に得られやすくなり、早期帰国を実現させるべく政治的責任を負った」と、一部において国の責任を認めたものの、国の施策に対して「さまざまな形態で中国残留孤児の調査研究が実施されたこと」などを挙げ、早期帰国実現義務違反は認めなかった。

自立支援義務(広島地裁では、生活援助自立義務と表現)では、帰国者の苦しい現状を戦争被害の一種と位置づけ、「補償は憲法や実態法規の予想しないもの」としたものの、何らかの政策が取りえたのだから、義務が生じる余地がないとまではいえない」とし、国の義務に言及したが、「政府の行ってきた支援施策が著しく合理性を欠くものではない」として、その義務違反は認めなかった。
その後、広島高裁に控訴したが、新制度の成立を受けて2007年12月23日に訴えを取り下げ、裁判は終結した。