中国残留帰国者問題の研究 ーその現状と課題ー

第4章 中国残留帰国者問題の課題と対策


4-7 地方自治体の支援体制の限界



(1)問題点
何度も述べてきたが、新支援制度の事業の多くが、きめの細かい、地域に密着した支援体制を目指し、地方自治体である区市町村の行うところとされている。
しかし、帰国者の定着の粗密など、地方自治体間でも大きな格差が生じていることは、すでに指摘した。

その他に、たとえば、中国残留帰国者への理解を深めるための啓発活動や、帰国者およびその家族に対する就労支援などは、1つの地方自治体では、人員的にも予算的にも限界があり、予算などが限られた中での事業では、その効果にも限界がある。


(2)対策
この問題は、「地域の格差」でも一部、考察したが、実施主体となるべき地方自治体(区市町村)が、定着している中国残留帰国者の数に差があるだけでなく、その自治体の規模(人口、面積、予算など)にも大きな差があることも指摘しなければならない。

また、国や都道府県と比べると、区市町村の行う住民サービスは多岐にわたっており、人員・予算の面でも、中国残留帰国者問題だけに重点を置き、取り組むことは不可能である。

中国残留帰国者の問題は、就学・就労支援や啓発活動など、ひとつの自治体では解決しえない問題も多くある。 そのため、各地方自治体の現状を把握し、その地域にあった取り組みができるようにコーディネートを行う役目が必要であり、その役割を担うのは、都道府県であり、国である。
今回の新制度の「きめの細かい支援」とは一見、矛盾するようにも感じられるかも知れないが、本当の意味で地域に密着したきめの細かいサービスを行うためには、他の地域と比較し、自分達にあった取り組みをすることは重要であり、そのためには、他の地域の情報が必要であることは言うまでもない。